高齢者における跨ぎ動作のアフォーダンス知覚 視覚条件の影響

本研究の目的は高齢者における跨ぎ動作(垂直方向)について特に視覚条件の視点から明らかにするものであった。アフォーダンスとは、外部環境(超えるべき高さ)が提供している情報に対してヒトは主に視覚を通して情報をキャッチし、自己が知覚している身体のサイズ、体力、過去の経験値などの内部環境とを適合させて行動を起こしていく過程を示している。対象者は健康な高齢群男性13名(平均年齢:63.1±3.0歳)、若年群男性16名(平均年齢:25.1±5.0歳)であった。跨ぎ動作の予測値は、7m 離れたところからバーを少しずつ挙げていき、限界を予測させた。条件は①両眼、②片眼、③高齢者体験用ゴーグル装着条件とした。実...

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Published in形態・機能 Vol. 17; no. 2; pp. 73 - 78
Main Authors 小野, 晃, 阿久津, 高伸, 伊藤, 智昭, 森田, 洋平, 宮下, 充正, 福島, 一敬, 渡邊, 紳一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published コ・メディカル形態機能学会 2019
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Summary:本研究の目的は高齢者における跨ぎ動作(垂直方向)について特に視覚条件の視点から明らかにするものであった。アフォーダンスとは、外部環境(超えるべき高さ)が提供している情報に対してヒトは主に視覚を通して情報をキャッチし、自己が知覚している身体のサイズ、体力、過去の経験値などの内部環境とを適合させて行動を起こしていく過程を示している。対象者は健康な高齢群男性13名(平均年齢:63.1±3.0歳)、若年群男性16名(平均年齢:25.1±5.0歳)であった。跨ぎ動作の予測値は、7m 離れたところからバーを少しずつ挙げていき、限界を予測させた。条件は①両眼、②片眼、③高齢者体験用ゴーグル装着条件とした。実測値は実際に跨げた高さを計測した。アフォーダンス臨界値は、実測値および各予測値 / 下肢長で算出した。アフォーダンス誤差は、各予測値 / 実測値で算出した。結果は以下の通りであった。予測値は、両眼・片眼・高齢者体験ゴーグル装着条件の順で両群とも低くなったが、高齢群のほうが有意に低い値を示した。アフォーダンス臨界値は、高齢群0.75、若年群0.84で有意差はなかった。アフォーダンス誤差は、高齢群0.81、若年群0.89で両群とも過小評価を示し、高齢群のほうが有意に低い値を示した。高齢者のアフォーダンス誤差は、両眼予測・片眼予測・ゴーグル着装予測の順で有意に低下した。以上のことから跨げる高さの予測は、バーの高さという外部環境と自己が知覚している脚長、筋力・バランス能といった内部環境を適合させるのに視覚情報が重要であり、高齢群のほうがこの傾向は顕著であった。
ISSN:1347-7145
1884-6084
DOI:10.11172/keitaikinou.17.73