腸腰筋へ穿破した粘液球腫症(myxoglobulosis)を伴った虫垂粘液腺腫の1例

患者は65歳の男性で,急性虫垂炎の診断で,近医にて抗生剤による保存的治療を受けたが,再燃したため受診した.腹部所見では,右下腹部に鶏卵大の弾性硬の腫瘤を触れ,右足挙上時の腰背部違和感を認めた.CTで右下腹部に内部不均一に造影効果のある腫瘤を認め,その背側の腸腰筋内部に3×4 cm大の低吸収域を認めた.腹部超音波検査では腸腰筋内は斑状で不均一であった.急性虫垂炎および腸腰筋への膿瘍の穿破の診断で手術を施行した.術前の診断どおり,虫垂先端が腸腰筋へ穿破していた.内部からは膿汁ではなく,直径2~4 mm大の真珠様の粒状物を認めた.虫垂切除後,粒状物を回収し,腸腰筋内部を洗浄,ドレーンを留置し手術を終...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 49; no. 12; pp. 1252 - 1260
Main Authors 松尾, 洋一, 杉戸, 伸好, 小森, 徹也, 保里, 惠一, 村元, 雅之, 竹山, 廣光, 長谷川, 毅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2016
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2016.0022

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Summary:患者は65歳の男性で,急性虫垂炎の診断で,近医にて抗生剤による保存的治療を受けたが,再燃したため受診した.腹部所見では,右下腹部に鶏卵大の弾性硬の腫瘤を触れ,右足挙上時の腰背部違和感を認めた.CTで右下腹部に内部不均一に造影効果のある腫瘤を認め,その背側の腸腰筋内部に3×4 cm大の低吸収域を認めた.腹部超音波検査では腸腰筋内は斑状で不均一であった.急性虫垂炎および腸腰筋への膿瘍の穿破の診断で手術を施行した.術前の診断どおり,虫垂先端が腸腰筋へ穿破していた.内部からは膿汁ではなく,直径2~4 mm大の真珠様の粒状物を認めた.虫垂切除後,粒状物を回収し,腸腰筋内部を洗浄,ドレーンを留置し手術を終えた.病理学的には中等度異型像を示したが,悪性像はなく,粘液球腫症(myxoglobulosis)を伴う虫垂原発粘液産生性腺腫と診断した.術後5年ほど経過しているが,特に再発は認めていない.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2016.0022