症例 心臓原発と考えられた悪性リンパ腫の1剖検例

心臓原発悪性リンパ腫は極めてまれであり,その報告は現在までに40数例を数えるにすぎない.今回我々は,肺塞栓の症状で発症し,心タンポナーデにて死亡した心臓原発悪性リンパ腫と考えられた症例を経験したので報告する.患者は73歳男性,労作時呼吸困難と動悸を主訴として入院となり,肺血流シンチおよび肺動脈造影にて肺塞栓と診断し,抗凝固療法と線溶療法を開始したが,臨床症状の改善なく,第27病日に心タンポナーデによって死亡した.剖検では右房,右室は著明に拡大し,右房はポリープ状の形態を示した腫瘤で埋め尽くされていた.同腫瘤の組織所見はB細胞型免疫芽球性リンパ腫,形質細胞型であり,同様の組織所見を示した腫瘤が心...

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Published in心臓 Vol. 20; no. 8; pp. 1014 - 1018
Main Authors 占部, 健, 青島, 重幸, 山本, 一博, 玄, 武司, 永尾, 正男, 滝沢, 明憲, 伊藤, 忠弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1988
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Summary:心臓原発悪性リンパ腫は極めてまれであり,その報告は現在までに40数例を数えるにすぎない.今回我々は,肺塞栓の症状で発症し,心タンポナーデにて死亡した心臓原発悪性リンパ腫と考えられた症例を経験したので報告する.患者は73歳男性,労作時呼吸困難と動悸を主訴として入院となり,肺血流シンチおよび肺動脈造影にて肺塞栓と診断し,抗凝固療法と線溶療法を開始したが,臨床症状の改善なく,第27病日に心タンポナーデによって死亡した.剖検では右房,右室は著明に拡大し,右房はポリープ状の形態を示した腫瘤で埋め尽くされていた.同腫瘤の組織所見はB細胞型免疫芽球性リンパ腫,形質細胞型であり,同様の組織所見を示した腫瘤が心外膜,傍大動脈リンパ節,横隔膜,下大静脈に認められたが,右房のものが最大であった.過去の報告例では,右房は心臓原発悪性リンパ腫の好発部位であり,ポリープ状の腫瘤形態は特徴的な所見であるとされている.以上より,本症例は心臓原発悪性リンパ腫と考えられ,その臨床経過も興味深いものであった.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.20.8_1014