症例 重篤な出血合併症にもかかわらず長期循環補助により救命しえた劇症型心筋炎の1例

心筋炎の予後は多くは良好とされているが,劇症型では急速に循環不全に陥り,積極的な循環補助を行わないと救命できない場合もある.本症例は感冒様症状ののちに著明な心不全症状を示し,来院時に完全房室ブロックを呈した心筋炎であった.一時的ペーシング,IABP補助のみでは循環維持が困難と考えられたため,臓器不全発現前からPCPSが導入された.しかし,IABPバルーン先端によって胸部大動脈が損傷されたので,2度の開胸止血術がこれらの補助循環下に施行された.出血合併症により382時間にわたる長期のPCPS補助となった.患者は最終的には回復し,ペースメーカー植え込み後に退院となった.長期間の補助循環を続けるため...

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Published in心臓 Vol. 30; no. 11; pp. 699 - 703
Main Authors 石井, 利治, 吉冨, 裕久, 伊藤, 弘晃, 田中, 厚志, 木村, 晃, 春原, 啓一, 梶野, 友世, 湯本, 正人, 田口, 弥人, 林, 和敏, 辻, 一彦, 中村, 不二雄, 大林, 利博, 鈴木, 克昌
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1998
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.30.11_699

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Summary:心筋炎の予後は多くは良好とされているが,劇症型では急速に循環不全に陥り,積極的な循環補助を行わないと救命できない場合もある.本症例は感冒様症状ののちに著明な心不全症状を示し,来院時に完全房室ブロックを呈した心筋炎であった.一時的ペーシング,IABP補助のみでは循環維持が困難と考えられたため,臓器不全発現前からPCPSが導入された.しかし,IABPバルーン先端によって胸部大動脈が損傷されたので,2度の開胸止血術がこれらの補助循環下に施行された.出血合併症により382時間にわたる長期のPCPS補助となった.患者は最終的には回復し,ペースメーカー植え込み後に退院となった.長期間の補助循環を続けるためには患者の全身状態の維持,合併症の回避,信頼性の高い補助循環装置が必要となるが,重篤な出血合併症にもかかわらず本症例が救命された背景には,重要臓器不全の発現前でのPCPS導入,安定した補助循環下で,DICや重症感染症等,他の重篤な合併症を併発しなかったことがあげられる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.30.11_699