症例 ステロイドパルス療法中に急性肺塞栓症を発症したネフローゼ症候群の1例

症例は30歳女性.平成12年8月他院にて微小変化型ネフローゼ症候群と診断され,ステロイド治療にて寛解.しかし同年12月より再発し,平成13年3月転居により当院へ紹介入院となった.入院時尿蛋白は9.7g/日で,血中総蛋白3.1g/dl,アルブミン1.1g/dl/と著明に低下していた.メチルプレドニゾロン1000mg/日のパルス療法2日目に突然呼吸困難を発症し,SpO2も88%へ低下した.造影CTにて右肺動脈主幹部に血栓像を認め,肺塞栓症と診断.緊急肺動脈造影では右肺動脈は主幹部で完全閉塞.カテーテルによる再疎通操作とウロキナーゼ24万単位を併用し,右肺動脈は上葉枝を除き再疎通した.以後,スワンガ...

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Published in心臓 Vol. 34; no. 12; pp. 968 - 972
Main Authors 川崎, 信吾, 坂谷, 知彦, 肌勢, 光芳, 川崎, 達也, 神谷, 匡昭, 杉原, 洋樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2002
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Summary:症例は30歳女性.平成12年8月他院にて微小変化型ネフローゼ症候群と診断され,ステロイド治療にて寛解.しかし同年12月より再発し,平成13年3月転居により当院へ紹介入院となった.入院時尿蛋白は9.7g/日で,血中総蛋白3.1g/dl,アルブミン1.1g/dl/と著明に低下していた.メチルプレドニゾロン1000mg/日のパルス療法2日目に突然呼吸困難を発症し,SpO2も88%へ低下した.造影CTにて右肺動脈主幹部に血栓像を認め,肺塞栓症と診断.緊急肺動脈造影では右肺動脈は主幹部で完全閉塞.カテーテルによる再疎通操作とウロキナーゼ24万単位を併用し,右肺動脈は上葉枝を除き再疎通した.以後,スワンガンツカテーテルを留置しウロキナーゼ計96万単位の投与と,ヘパリン1.5万単位/日の持続投与により,臨床症状は漸次改善.遠隔期肺動脈造影ではほぼ正常化した. 本例はネフローゼ症候群による血栓準備状態にステロイドパルス療法の一過性過凝固状態が加わり発症した可能性が推察された.本例はネフローゼ症候群の治療上留意すべき点を含んでいると考えられ報告した.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.34.12_968