HEART's Original [症例] PDE III 阻害薬とβ遮断薬の併用が著効したと考えられた重症心不全を合併した急性心筋梗塞の1例

高齢で,重症の心不全を合併した急性心筋梗塞の治療は苦慮する場合が多い.症例は80歳の女性.胸痛を主訴に当院救急外来に救急搬送された.血圧70/44mmHg,脈拍120/分・不整,意識レベルはJCS 20,心電図では,V2~3にてST上昇,心エコーでは,左室壁運動は全体的に低下.特に前壁中隔は無収縮. 来院時より心原性ショックの状態で,ただちに大動脈内バルーンパンピング(IABP)を留置し緊急冠動脈造影を行った.左前下行枝#7と左回旋枝#13が完全閉塞であった.左前下行枝#7は血栓吸引療法にて0%となり,左回旋枝#13は経皮的冠動脈形成術のみにて25%となった.スワンガンツによる血行動態はFor...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in心臓 Vol. 37; no. 11; pp. 933 - 937
Main Authors 上野, 博史, 福田, 仁也, 本村, 一美, 三角, 郁夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2005
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:高齢で,重症の心不全を合併した急性心筋梗塞の治療は苦慮する場合が多い.症例は80歳の女性.胸痛を主訴に当院救急外来に救急搬送された.血圧70/44mmHg,脈拍120/分・不整,意識レベルはJCS 20,心電図では,V2~3にてST上昇,心エコーでは,左室壁運動は全体的に低下.特に前壁中隔は無収縮. 来院時より心原性ショックの状態で,ただちに大動脈内バルーンパンピング(IABP)を留置し緊急冠動脈造影を行った.左前下行枝#7と左回旋枝#13が完全閉塞であった.左前下行枝#7は血栓吸引療法にて0%となり,左回旋枝#13は経皮的冠動脈形成術のみにて25%となった.スワンガンツによる血行動態はForrester IV群.早期再灌流療法後も重症心不全が持続し,急性期はIABPやカテコラミン製剤によって血行動態の改善を図ったが,頻脈性心房細動の合併もあり,心不全の治療が非常に困難であった.本症例においてわれわれは,ニフェカラントを使用しながらDCにて除細動に成功した.またIABP離脱後に心不全の悪化が認められたが,PDE III阻害薬併用によるβ遮断薬の導入に成功し,内服による心不全コントロールが可能となり12月1日には独歩退院となった. 重症心不全を合併した急性心筋梗塞においては,PDE III阻害薬併用によるβ遮断薬導入は有効な治療法になり得ると考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.37.11_933