症例 PTCR時に遭遇した右冠動脈左バルサルバ洞起始に合併した若年性心筋梗塞の1例

最近心筋梗塞急性発症期に,PTCR(経皮経管冠動脈再疎通術)を行い,梗塞壊死部を最少限度に抑える治療が確立されてきた.我々は胸痛を主症状とした若年発症心筋梗塞患者の急性発症期にPTCRを企てたが,責任冠動脈を発見できず,慢性期の左バルサルバ洞造影にて,右冠動脈左バルサルバ洞起始異常の合併症として心筋梗塞が発症したと診断し得た症例を経験した. 従来右冠動脈起始異常は臨床的意義は乏しいとされていたが,最近は重症度は,異常冠動脈の支配する心筋領域の広さに依存するという報告がされており,本例はその説を支持するものであると思われた.また,本例のような起始異常は極めてまれであり,心筋梗塞を合併した報告はあ...

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Published in心臓 Vol. 19; no. 9; pp. 1110 - 1116
Main Authors 保浦, 賢三, 小川, 拓男, 中川, 浩, 望月, 盈宏, 岡本, 浩, 荒木, 登, 阿部, 稔雄, 服部, 和樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1987
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.19.9_1110

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Summary:最近心筋梗塞急性発症期に,PTCR(経皮経管冠動脈再疎通術)を行い,梗塞壊死部を最少限度に抑える治療が確立されてきた.我々は胸痛を主症状とした若年発症心筋梗塞患者の急性発症期にPTCRを企てたが,責任冠動脈を発見できず,慢性期の左バルサルバ洞造影にて,右冠動脈左バルサルバ洞起始異常の合併症として心筋梗塞が発症したと診断し得た症例を経験した. 従来右冠動脈起始異常は臨床的意義は乏しいとされていたが,最近は重症度は,異常冠動脈の支配する心筋領域の広さに依存するという報告がされており,本例はその説を支持するものであると思われた.また,本例のような起始異常は極めてまれであり,心筋梗塞を合併した報告はあるものの,PTCR時にかような例に遭遇したという報告は,本邦では筆者の調べる限りではない.しかし,PTCRが普及するにつれて,かような症例の報告は増えると思われ,若干の文献的考察を加え,遭遇時の警鐘の意味を含めて報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.19.9_1110