症例 血管内視鏡および血管内エコーにて血栓を観察しえた肺塞栓症の1例

• Published in: 心臓 Vol. 28; no. 11; pp. 927 - 931
• Main Authors: 加藤, 千博, 松山, 裕宇, 野村, 雅則, 岩瀬, 正嗣, 武田, 京子, 木村, 美由起, 長谷川, 和生, 山本, 春光, 鯉江, 伸, 菱田, 仁
• Format: Journal Article
• Language: Japanese
• Published: 公益財団法人 日本心臓財団 1996
• Subjects: 肺血栓塞栓症; 血管内エコー; 血管内視鏡
• ISSN: 0586-4488; 2186-3016
• DOI: 10.11281/shinzo1969.28.11_927

肺高血圧症を合併した慢性肺血栓塞栓症に対し,右心カテーテル時に血管内エコー(IVUS),血管内視鏡(AS)による血栓の性状評価を行いえたので報告する.【症例】49歳,女性.平成4年より労作時息切れを自覚,平成6年呼吸困難が増悪し,精査目的にて入院.身体所見:頸静脈の怒張,胸部聴診上4LSB収縮期雑音と心音IIp音の亢進あり,血液検査:FDP,D-dimer,GOT,GPT,LDHの軽度上昇と低酸素血症.胸部X線:右第2弓の突出,心胸郭比52%.心電図:肺性P,不完全右脚ブロック,右軸偏位,II,III,aVF,V2～4陰性T,V5,6深いS.心エコー:右室腔拡大,心室中隔の右室からの圧排.右心カテーテル検査:肺動脈圧80/25mmHg,右室圧80/9mmHg,肺動脈楔入圧11mmHg,肺血管抵抗792dyne・sec・cm-5.肺動脈造影:右肺動脈上葉枝の血流途絶像,下葉枝の血管充盈欠損.肺血流シンチ:右肺segment2,4,5,6,10の血流欠損像.以上より肺血栓塞栓症,肺高血圧症と診断し,IVUS,ASを施行した.IVUS:右肺動脈下葉枝に輝度の高い三日月状の壁在血栓を認めた.血管壁も輝度が高く,壁肥厚,伸展不良であった.AS:塊状で赤色と一部白色の混在血栓,桃白色の血管壁を認めた.【考察】IVUSで描出された輝度の高い壁在血栓は,AS上塊状の赤色,白色混在血栓としてみられ,反復性にフィブリン血栓に血小板が付着した器質化血栓と考えられた.血管壁にも血栓の器質化や肺高血圧による二次的な血管壁病変の存在が示唆された.【結語】IVUSとASの併用が肺動脈血栓の性状や血管壁の観察に有用であった.