症例 ホルター心電図施行中に一過性心停止をきたした1症例

症例は86歳女性.息切れを主訴に来院し,頻脈を指摘されて入院となった.入院晴の心電図は左軸偏位を伴う右脚ブロック型QRSの頻拍を示し,ジソピラミド,ジゴキシンの経口投与を開始した.しかし頻拍は改善せず,ベラバミル,アプリンジンの投与により消退した.頻拍消退後の心電図においても左軸偏位と右脚ブロックを認め,右脚ブロックに左脚前枝ブロックが合併したものと考えられた.その後調律は心房細動と洞調律を移行していたが,心拍数は60/分前後にコントロールされた.ホルター心電図施行中に意識消失,尿失禁,チアノーゼを認め,ホルター心電図を解析したところ約5分間の心停止が認められた.この一過性心停止は上室性頻拍の...

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Published in心臓 Vol. 23; no. 9; pp. 1072 - 1077
Main Authors 松井, 幹之, 斉藤, 宗一, 平田, 慎也, 遠藤, 国勝, 池田, こずえ
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1991
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Summary:症例は86歳女性.息切れを主訴に来院し,頻脈を指摘されて入院となった.入院晴の心電図は左軸偏位を伴う右脚ブロック型QRSの頻拍を示し,ジソピラミド,ジゴキシンの経口投与を開始した.しかし頻拍は改善せず,ベラバミル,アプリンジンの投与により消退した.頻拍消退後の心電図においても左軸偏位と右脚ブロックを認め,右脚ブロックに左脚前枝ブロックが合併したものと考えられた.その後調律は心房細動と洞調律を移行していたが,心拍数は60/分前後にコントロールされた.ホルター心電図施行中に意識消失,尿失禁,チアノーゼを認め,ホルター心電図を解析したところ約5分間の心停止が認められた.この一過性心停止は上室性頻拍の改善の目的で投与していたベラバミル,アプリンジンの副作用と考えられる完全房室ブロックによるものであった.アプリンジンの投与中止により投与中認められていた1度房室ブロックは消失し,退院することができた.Proarrhythmiaは一般に抗不整脈薬投与中の頻拍性不整脈の出現・増悪が問題となる場合が多いが,徐脈をきたした場合も重篤な結果を招き,重要と考えられたので報告した.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.23.9_1072