臨床 肺高血圧を合併した僧帽弁狭窄症の術後管理の問題点

僧帽弁狭窄症を含む心臓弁膜症手術症例55例について,術前心臓カテーテル検査より全肺血管抵抗(TPR)を求め,術後肺循環動態の推移との関係について検討した.A群(TPR<500 dynes・sec・cm-5)34例,B群(TPR≧500 dynes・sec・cM-5)21例中,死亡例はそれぞれ2例(5.9%)および6例(29%)で,B群で有意に高い死亡率を認めた(P<O.05).また術後集中治療室での肺動脈収縮期圧が70rnmHg以上か,または血管拡張薬としてのプロスタグランディンE1を用いて肺高血圧の治療を行った症例はA群にはなく,B群で8例(38%)に認められた.55例中13例(...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in心臓 Vol. 21; no. 9; pp. 1082 - 1090
Main Authors 酒井, 章, 三井, 利夫, 堀, 原一, 土井, 幹雄, 筒井, 達夫, 榊原, 謙, 厚美, 直孝, 岡村, 健二, 井島, 宏, 小形, 岳三郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.09.1989
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.21.9_1082

Cover

More Information
Summary:僧帽弁狭窄症を含む心臓弁膜症手術症例55例について,術前心臓カテーテル検査より全肺血管抵抗(TPR)を求め,術後肺循環動態の推移との関係について検討した.A群(TPR<500 dynes・sec・cm-5)34例,B群(TPR≧500 dynes・sec・cM-5)21例中,死亡例はそれぞれ2例(5.9%)および6例(29%)で,B群で有意に高い死亡率を認めた(P<O.05).また術後集中治療室での肺動脈収縮期圧が70rnmHg以上か,または血管拡張薬としてのプロスタグランディンE1を用いて肺高血圧の治療を行った症例はA群にはなく,B群で8例(38%)に認められた.55例中13例(5.5%)において,術後肺高血圧クリーゼが発症した,これらの症例はいずれも術前TPR1,500dynes・sec・cm-5以上であり,術直後よりも血行動態の改善が認められ安定期に入った2~3日目に突然発症し,低心拍出量症候群(LOS)に至った.これに対しプロスタグランディンE1 0.1~76ng/kg/minを中心静脈より投与し,3例中2例でLOSより離脱し循環動態の改善に有効であった.これら3例の肺血管病変としては,いずれも筋性動脈の高度な中膜肥厚が認められたが,内膜病変は軽度のも.のもあり,血管の攣縮によって急激な右室後負荷の上昇をきたし,右心不全に陥ったことが予想され,血管拡張薬の適切な使用が不可欠と考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.21.9_1082