心房細動に対する治療戦略 洞調律化か, 心拍数コントロールか?

心房細動(AF)は心房筋の有効収縮が欠如した状態であり, これが持続すると様々な不利益を被る. 第一に挙げられるのが血行動態的弊害で, 心房収縮の欠如, 拡張期相の短縮およびR-R間隔の不規則化による心血行動態の悪化がある. また, 心室応答の高い状態が持続すると, 心機能の低下を伴って, いわゆる頻拍誘発性心筋症の病態を呈してくる. これらが心不全症状を引き起こし, 運動耐容量を低下させる. また持続性AFにより心房内血栓が形成され, 脳梗塞など塞栓症を合併する頻度が有意に増大する. この様に心房細動が存在するだけで様々な合併症を惹き起こすわけである. 従って患者の病態, 生活の質(QOL)...

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Published in日本医科大学医学会雑誌 Vol. 1; no. 2; pp. 74 - 78
Main Author 小林, 義典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 2005
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ISSN1349-8975
1880-2877
DOI10.1272/manms.1.74

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Summary:心房細動(AF)は心房筋の有効収縮が欠如した状態であり, これが持続すると様々な不利益を被る. 第一に挙げられるのが血行動態的弊害で, 心房収縮の欠如, 拡張期相の短縮およびR-R間隔の不規則化による心血行動態の悪化がある. また, 心室応答の高い状態が持続すると, 心機能の低下を伴って, いわゆる頻拍誘発性心筋症の病態を呈してくる. これらが心不全症状を引き起こし, 運動耐容量を低下させる. また持続性AFにより心房内血栓が形成され, 脳梗塞など塞栓症を合併する頻度が有意に増大する. この様に心房細動が存在するだけで様々な合併症を惹き起こすわけである. 従って患者の病態, 生活の質(QOL)を改善させる治療戦略としては, AFであることを容認し心拍数コントロールと血栓予防を主眼に治療を進める「rate control strategy」(レート戦略)よりも, 積極的に洞調律維持に努める「rhythm control strategy」(リズム戦略)の方が優れていることが予想される.
ISSN:1349-8975
1880-2877
DOI:10.1272/manms.1.74