耳下腺癌の病理

唾液腺腫瘍は比較的まれで、その約 80%は耳下腺に発生する。そして、耳下腺腫瘍の約 20%は悪性で、そのうちの大多数は癌腫である。耳下腺癌は、組織像が多彩な上、数多くの組織型や種々の亜型が存在しており、また、異なる組織型であっても部分的には類似した組織像がみられるため、一般病理医にとって診断に難渋することが少なくない。さらに、耳下腺癌には生物学的態度の異なる腫瘍群が混在している。耳下腺癌の組織分類は複雑であるが、組織型の判定は予後の予測や治療方針の決定に直結する。依然として HE 染色が病理診断の基本となるが、免疫組織化学は診断精度を高めたり、腫瘍細胞の性格や分化、細胞増殖能、および癌遺伝子の...

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Published in耳鼻と臨床 Vol. 59; no. Suppl.1; pp. S32 - S37
Main Author 長尾, 俊孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻と臨床会 20.12.2013
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ISSN0447-7227
2185-1034
DOI10.11334/jibi.59.S32

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Summary:唾液腺腫瘍は比較的まれで、その約 80%は耳下腺に発生する。そして、耳下腺腫瘍の約 20%は悪性で、そのうちの大多数は癌腫である。耳下腺癌は、組織像が多彩な上、数多くの組織型や種々の亜型が存在しており、また、異なる組織型であっても部分的には類似した組織像がみられるため、一般病理医にとって診断に難渋することが少なくない。さらに、耳下腺癌には生物学的態度の異なる腫瘍群が混在している。耳下腺癌の組織分類は複雑であるが、組織型の判定は予後の予測や治療方針の決定に直結する。依然として HE 染色が病理診断の基本となるが、免疫組織化学は診断精度を高めたり、腫瘍細胞の性格や分化、細胞増殖能、および癌遺伝子の発現などの組織学的には測ることのできないものを検索することのできる有用な手段となる。最近、腫瘍特異的な染色体転座によって形成される融合遺伝子が粘表皮癌 (CRTC1 [MECT1]-MAML2)、腺様嚢胞癌 (MYB-NFIB)、および乳腺相似分泌癌(ETV6-NTRK3)で同定された。これらの融合遺伝子は、診断、予後、および将来の治療面において意義を持つと考えられる。
ISSN:0447-7227
2185-1034
DOI:10.11334/jibi.59.S32