症例 肥大型心筋症の自然消退を認めたWPW症候群の1乳児例

左室後壁の肥厚を主体とした肥大型心筋症(HCM)を基礎心疾患に持つWPW症候群の乳児で,心筋肥厚消退に伴い難治性不整脈が完治した例を報告する.症例は,7カ月の女児で,生後19日目にチアノーゼ発作をきたし,WPW症候群による頻拍発作と診断されて治療を受けていた.今回,頻拍発作がコントロール不能となり,心室細動をきたしたため,本院に入院した. 心エコー図にて左室後壁を主体とした著しい心筋肥厚を認め,左室造影,心筋シンチなどの画像診断上からHCMの合併が考えられた.経過中の心電図では,AおよびC型のWPW波形を認めたため,複数副伝導路の存在が予想された.頻拍発作は,心房興奮が房室伝導系を順行するもの...

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Published in心臓 Vol. 19; no. 4; pp. 471 - 476
Main Authors 糸井, 利幸, 中川, 雅生, 高, 永煥, 林, 鐘声, 清沢, 伸幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1987
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Summary:左室後壁の肥厚を主体とした肥大型心筋症(HCM)を基礎心疾患に持つWPW症候群の乳児で,心筋肥厚消退に伴い難治性不整脈が完治した例を報告する.症例は,7カ月の女児で,生後19日目にチアノーゼ発作をきたし,WPW症候群による頻拍発作と診断されて治療を受けていた.今回,頻拍発作がコントロール不能となり,心室細動をきたしたため,本院に入院した. 心エコー図にて左室後壁を主体とした著しい心筋肥厚を認め,左室造影,心筋シンチなどの画像診断上からHCMの合併が考えられた.経過中の心電図では,AおよびC型のWPW波形を認めたため,複数副伝導路の存在が予想された.頻拍発作は,心房興奮が房室伝導系を順行するものと逆行するものとの2種があり,さらに小児期にはまれな心房粗動,心房細動を認め,心室細動への移行も認めた.その他,二段脈とshort runを伴う重篤な心室性期外収縮が繰り返し出現したため,治療に難渋したが,心筋肥厚の消退をみるに及び,いずれの不整脈も完全に消失した.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.19.4_471