症例 拡張型心筋症類似の病態を呈した成人の自動能による心房頻拍の1例

成人においてはまれな心房自動頻拍の持続に伴い,拡張型心筋症類似の病態を呈した症例を報告する.症例は59歳,男性.呼吸困難感を訴え,心不全と診断され入院.胸部X線写真上心胸比の拡大と胸水を認め,心電図では洞性のものとは異なる変形したP波が約195/分の頻度でみられ,房室伝導比は2:1ないし1:1の頻拍であった.心エコー図上左室全体の壁運動の低下が認められ,駆出分画は35.6%と低下していた.電気生理学的検査では,頻拍のA波のactivation sequenceは低位右房,His束電位記録部,冠静脈洞近位部,冠静脈洞遠位部の順であった.頻拍は房室ブロックが生じてもAA間隔に変化を生じず持続し,心...

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Published in心臓 Vol. 28; no. 2; pp. 150 - 156
Main Authors 武田, 京子, 植村, 晃久, 近松, 均, 渡邊, 靖之, 嶋地, 健, 可児, 篤, 加藤, 千雄, 松山, 裕宇, 安井, 直, 森本, 紳一郎, 菱田, 仁, 渡邉, 佳彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1996
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Summary:成人においてはまれな心房自動頻拍の持続に伴い,拡張型心筋症類似の病態を呈した症例を報告する.症例は59歳,男性.呼吸困難感を訴え,心不全と診断され入院.胸部X線写真上心胸比の拡大と胸水を認め,心電図では洞性のものとは異なる変形したP波が約195/分の頻度でみられ,房室伝導比は2:1ないし1:1の頻拍であった.心エコー図上左室全体の壁運動の低下が認められ,駆出分画は35.6%と低下していた.電気生理学的検査では,頻拍のA波のactivation sequenceは低位右房,His束電位記録部,冠静脈洞近位部,冠静脈洞遠位部の順であった.頻拍は房室ブロックが生じてもAA間隔に変化を生じず持続し,心房刺激による停止が困難であったことから,心房自動頻拍と診断された.心筋生検により心筋細胞の配列の乱れ,線維化などの異常が確認されたが,頻拍との関係は不明であった.本症例ではこの頻拍の持続が心不全の発現に強く関与しており,フレカイニドの内服により頻拍が停止し,洞調律となるとともに,漸次,心機能も改善していき,心不全は代償された.しかしながら,一般に心房自動頻拍には薬剤抵抗性のものが多く,なかには心拍数をコントロールするために外科的手術療法やカテーテルアブレーションによる自動中枢焼灼の必要な例もある.本症例も今後の経過が注目される.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.28.2_150