症例 失神発作の発生に音刺激の関与が示唆された特発性QT延長症候群の1例

音刺激が誘因となり,頻回に頻脈性心室性不整脈による失神発作をきたした特発性QT延長症候群の1例を報告する.症例は,生来健康であった35歳の女性である.入院時の心電図では,QT延長およびV1~V4にT波逆転を認めたが,遺伝歴はなく,心エコー,冠状動脈にも異常はなかった.失神発作は,torsades de pointes型の心室頻拍,心室粗細動により起こったが,うち3回は電気的除細動により停止した.発作は夜間入眠時および早朝覚醒時に好発し,その17回中9回において音刺激が誘因になっていた.一方非発作時の24時間心電図では,QTc間隔の日内変動がみられているが,心室性不整脈の出現は認めなかった.患者...

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Published in心臓 Vol. 26; no. 5; pp. 534 - 539
Main Authors 武山, 博之, 羽田, 勝征, 三須, 一彦, 田宮, 栄治, 松尾, 博司, 松井, 浩, 中島, 敏明, 瀬川, 和彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1994
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.26.5_534

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Summary:音刺激が誘因となり,頻回に頻脈性心室性不整脈による失神発作をきたした特発性QT延長症候群の1例を報告する.症例は,生来健康であった35歳の女性である.入院時の心電図では,QT延長およびV1~V4にT波逆転を認めたが,遺伝歴はなく,心エコー,冠状動脈にも異常はなかった.失神発作は,torsades de pointes型の心室頻拍,心室粗細動により起こったが,うち3回は電気的除細動により停止した.発作は夜間入眠時および早朝覚醒時に好発し,その17回中9回において音刺激が誘因になっていた.一方非発作時の24時間心電図では,QTc間隔の日内変動がみられているが,心室性不整脈の出現は認めなかった.患者は,β遮断薬,Ca拮抗薬,mexiletinで治療されたが,β遮断薬の増量が有効であった.以上より,音刺激が本症の心室性不整脈の誘因と成りうること,および発作出現に自律神経系の関与が示唆された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.26.5_534