症例 冠状動脈起始異常,椎骨動脈起始異常,椎骨動脈瘤を伴ったMarfan症候群の1例

Marfan症候群に冠状動脈起始異常と椎骨動脈瘤を合併した症例を経験したので報告する.症例は38歳,男性.当院脳外科にめまいの精査目的にて入院した.脳MRI,右椎骨動脈造影にて右血栓化椎骨動脈瘤と診断され,また,その際の腕頭動脈造影にて右椎骨動脈の発生異常が認められた.脳外科入院時現症にて長身痩せ型のMarfan様体型,拡張期灌水様雑音が聴取されたため,心血管系精査のため当科入院となった.心エコー図検査および大動脈造影検査で,上行大動脈および大動脈弁輪拡張,大動脈弁閉鎖不全症が認められた.骨格系異常,心血管系異常よりM a r f a n 症候群不全型と診断された. 冠状動脈造影検査で右冠状動...

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Published in心臓 Vol. 30; no. 9; pp. 561 - 566
Main Authors 小野田, 正文, 土谷, 範昭, 坪光, 雄介, 松岡, 博昭, 高橋, 正樹, 堀中, 繁夫, 高田, 正則, 谷口, 泰
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1998
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.30.9_561

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Summary:Marfan症候群に冠状動脈起始異常と椎骨動脈瘤を合併した症例を経験したので報告する.症例は38歳,男性.当院脳外科にめまいの精査目的にて入院した.脳MRI,右椎骨動脈造影にて右血栓化椎骨動脈瘤と診断され,また,その際の腕頭動脈造影にて右椎骨動脈の発生異常が認められた.脳外科入院時現症にて長身痩せ型のMarfan様体型,拡張期灌水様雑音が聴取されたため,心血管系精査のため当科入院となった.心エコー図検査および大動脈造影検査で,上行大動脈および大動脈弁輪拡張,大動脈弁閉鎖不全症が認められた.骨格系異常,心血管系異常よりM a r f a n 症候群不全型と診断された. 冠状動脈造影検査で右冠状動脈起始部から回旋枝が分岐する左冠状動脈回旋枝起始異常が認められた.Marfan症候群と冠状動脈起始異常を含む血管奇形の合併は偶発的とも考えられるが,先天性結合織代謝異常であるMarfan症候群での先天性奇形の発生は,結合織の代謝失調が胎児期に表現されたことにより発生した可能性も考えられた.一方,脳動脈瘤に関しては,病理組織所見は得られておらず,その因果関係は不明であるが,脳動脈瘤の原因となる動脈硬化,感染症および外傷などは考えにくいことから,本症例における脳動脈瘤の合併もMarfan症候群による先天性結合織代謝異常による可能性が考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.30.9_561