HEART's Original [症例] 内臓心房錯位症候群に合併した両大血管右室起始症(ファロータイプ)の1例

66歳の男性で,幼少時より咳漱・呼吸困難・運動制限があったが放置.健診にて心室中隔欠損症・内臓逆位・右側大動脈弓を指摘されるも,確定診断には至らず過ごしていた.66歳になり下腿浮腫と労作時呼吸困難が出現し,NYHA分類II度の心不全症状を認めるようになった.身体所見では,ばち指と全身チアノーゼを認め,心雑音は第4肋間胸骨左縁にLevine4度の収縮期雑音を聴取したが,肺野に雑音はなかった.末梢動脈血ガス所見では,酸素分圧は52.4mmHgであった.入院治療開始後の心臓カテーテル施行時には,右室流出路狭窄による最大圧較差は78mmHgで,心室中隔欠損を介した左右シャント率は1.8%(Qp/Qs=...

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Published in心臓 Vol. 37; no. 4; pp. 322 - 327
Main Authors 野尻, 明由美, 望月, 正武, 永澤, 英孝, 栗須, 修, 田村, 忠司, 川井, 真, 太田, 正人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2005
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.37.4_322

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Summary:66歳の男性で,幼少時より咳漱・呼吸困難・運動制限があったが放置.健診にて心室中隔欠損症・内臓逆位・右側大動脈弓を指摘されるも,確定診断には至らず過ごしていた.66歳になり下腿浮腫と労作時呼吸困難が出現し,NYHA分類II度の心不全症状を認めるようになった.身体所見では,ばち指と全身チアノーゼを認め,心雑音は第4肋間胸骨左縁にLevine4度の収縮期雑音を聴取したが,肺野に雑音はなかった.末梢動脈血ガス所見では,酸素分圧は52.4mmHgであった.入院治療開始後の心臓カテーテル施行時には,右室流出路狭窄による最大圧較差は78mmHgで,心室中隔欠損を介した左右シャント率は1.8%(Qp/Qs=1.O18)であった.心臓超音波検査と胸部MRI検査では,心房位は不定位で下大静脈が欠損しており,大動脈弁直下に大きな心室中隔欠損を伴い,大動脈は中隔に騎乗して大動脈断面積の50%以上が右室側と判断された.左室壁運動はびまん性に低下し,最大流速3.93m/secの右室流出路狭窄を認めた.さらに右大動脈弓,左上大静脈遺残,下大静脈欠損,奇静脈結合と多脾症,腹部臓器不定位を認めた.本症例は内臓心房錯位症候群に合併した,外科的治療をせずに長期生存し得た両大血管右室起始症(ファロータイプ)であり,その理由としては低酸素血症・多血症が軽度で,右室流出路狭窄によって,肺血管抵抗がほぼ正常で肺高血圧症がなかったことが考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.37.4_322