症例 強皮症心の1自験例

心病変を合併した強皮症の1自験例について報告する.40歳の女性で,臨床的にも血清学的にも典型的な強皮症と診断された.胸痛を認めず,冠危険因子もなかったが,心電図,断層心エコー法,心筋シンチグラム法などから陳旧性の前壁中隔および下壁の心筋梗塞の合併を疑われ,心臓カテーテル検査が施行された.その結果心拍出量,心血管内圧は正常範囲内で,左右冠動脈には有意狭窄病変を認めなかった.また寒冷刺激で手指のレイノー現象を誘発し冠静脈洞血流量を測定したが,特に異常を認めなかった. 強皮症の心筋病変の成因,機序については諸説ありいまだ明瞭ではないが,Bulkleyらは病理学的検討から冠動脈のスパスム説を提唱した....

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in心臓 Vol. 18; no. 6; pp. 704 - 709
Main Authors 今福, 俊夫, 永田, 雅良, 中澤, 博江, 桜井, 謙治, 秋山, 英明, 小川, 聡, 山崎, 元, 半田, 俊之介, 中村, 芳郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1986
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:心病変を合併した強皮症の1自験例について報告する.40歳の女性で,臨床的にも血清学的にも典型的な強皮症と診断された.胸痛を認めず,冠危険因子もなかったが,心電図,断層心エコー法,心筋シンチグラム法などから陳旧性の前壁中隔および下壁の心筋梗塞の合併を疑われ,心臓カテーテル検査が施行された.その結果心拍出量,心血管内圧は正常範囲内で,左右冠動脈には有意狭窄病変を認めなかった.また寒冷刺激で手指のレイノー現象を誘発し冠静脈洞血流量を測定したが,特に異常を認めなかった. 強皮症の心筋病変の成因,機序については諸説ありいまだ明瞭ではないが,Bulkleyらは病理学的検討から冠動脈のスパスム説を提唱した.検査法の限界などの問題点はあるが,本症例の検査結果からは強皮症の心筋病変について冠循環の関与は否定的であった.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.18.6_704