研究 心病変を合併したMELASに対する心房ペーシングの知見

症例は21歳男性.発作性の頭痛,嘔気,眩暈を主訴に入院した.理学的に低身長,難聴,筋萎縮,小脳失調を呈し,血液,髄液中の乳酸とピルビン酸の濃度が高かった.家族歴では3人が突然死していた.心電図検査で左室肥大,心エコー検査でび慢性の左室壁肥厚を認めた.運動負荷により血液中の乳酸,ピルビン酸濃度が著明に上昇したが,心房ペーシング負荷試験では冠静脈洞の乳酸,ピルビン酸は上昇しなかった.右室心筋生検の病理検索の結果,HE染色で心筋の空胞様変性を,Gomori-trichrome染色でragged red fiberを,電顕でミトコンドリアの異常集積像を認めた.ミトコンドリアDNA断片をPCRで増幅した...

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Published in心臓 Vol. 27; no. 3; pp. 207 - 216
Main Authors 小川, 裕二, 山下, 裕久, 名取, 俊介, 川嶋, 栄司, 南, 宏明, 箭原, 修, 木村, 隆, 左藤, 伸之, 菊池, 健次郎, 日井, 良直, 楠, 祐一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.03.1995
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.27.3_207

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Summary:症例は21歳男性.発作性の頭痛,嘔気,眩暈を主訴に入院した.理学的に低身長,難聴,筋萎縮,小脳失調を呈し,血液,髄液中の乳酸とピルビン酸の濃度が高かった.家族歴では3人が突然死していた.心電図検査で左室肥大,心エコー検査でび慢性の左室壁肥厚を認めた.運動負荷により血液中の乳酸,ピルビン酸濃度が著明に上昇したが,心房ペーシング負荷試験では冠静脈洞の乳酸,ピルビン酸は上昇しなかった.右室心筋生検の病理検索の結果,HE染色で心筋の空胞様変性を,Gomori-trichrome染色でragged red fiberを,電顕でミトコンドリアの異常集積像を認めた.ミトコンドリアDNA断片をPCRで増幅した後,制限酵素で切断して解析した結果,塩基番号3243におけるAからGへの変異が示唆された.また,骨格筋の電子伝達系酵素活性測定ではcomplex I欠損が認められ,ミトコンドリア脳筋症と診断された.文献的考察を加え報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.27.3_207