岐阜県内の歯科診療所における根管洗浄に関するアンケート調査

目的:根管洗浄は,根管内細菌の除去・減少を担う重要なステップであるが,統一された根管洗浄法は存在せず,歯科大学の臨床においてもその方法に違いが確認された.歯科診療所で治療を行う歯科医師は,学んだ根管洗浄法が異なる可能性が高く,結果として臨床現場においても術者ごとのばらつきが生じると考えられる.そこで,今回,岐阜県歯科医師会にご協力賜り,加入者に対して,実際に行っている根管洗浄方法のアンケートを行い,歯科診療所での根管洗浄の実態を調査した. 方法:2024年2月に調査を実施した.岐阜県にて開院している歯科診療所全949件(2022年医療施設動態調査)中,岐阜県歯科医師会に入会している歯科診療所8...

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Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 68; no. 3; pp. 113 - 121
Main Authors 山崎, 真帆, 河野, 哲, 長谷川, 智哉, 田中, 雅士, 伊藤, 友見, 瀧谷, 佳晃, 木方, 一貴, 横川, 大輔, 堺, ちなみ, 矢間, 大登, 赤堀, 裕樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 30.06.2025
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.68.113

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Summary:目的:根管洗浄は,根管内細菌の除去・減少を担う重要なステップであるが,統一された根管洗浄法は存在せず,歯科大学の臨床においてもその方法に違いが確認された.歯科診療所で治療を行う歯科医師は,学んだ根管洗浄法が異なる可能性が高く,結果として臨床現場においても術者ごとのばらつきが生じると考えられる.そこで,今回,岐阜県歯科医師会にご協力賜り,加入者に対して,実際に行っている根管洗浄方法のアンケートを行い,歯科診療所での根管洗浄の実態を調査した. 方法:2024年2月に調査を実施した.岐阜県にて開院している歯科診療所全949件(2022年医療施設動態調査)中,岐阜県歯科医師会に入会している歯科診療所884件に対し,根管洗浄に関するアンケートの依頼状ならびにアンケート用紙・回答用紙を送付し,回答を求めた.質問内容は根管洗浄実施の有無,実施するタイミング,使用器具や薬剤,偶発症に関する項目などの計12項目とした.なお,回答はGoogleフォームおよびFAXの2通りの方法を用意した. 結果:884診療所中155診療所に回答いただき,アンケート回収率は17.5%であった.まず,根管洗浄を行うかという項目に対しては98.7%が行うと回答.根管洗浄を行うタイミングに関しては,21.6%が拡大サイズの上昇時に毎回必ず行うと回答し,53.6%が拡大サイズの上昇時に適宜行うと回答,24.8%が拡大中は行わず,最終拡大終了後(貼薬前)に行うと回答した.洗浄方法は,85.0%がシリンジ,68.0%が超音波発振装置,35.9%が可聴域振動装置を使用すると回答した.その他の洗浄方法は3.9%であった.シリンジに用いる薬剤としては,91.5%が次亜塩素酸ナトリウム溶液,60.0%がEDTA溶液,34.6%が過酸化水素水,10.8%が精製水,15.4%が生理食塩水,3.8%が強酸性水と回答した. 根管洗浄中の偶発症は24.8%の診療所で経験しており,その内容は根管洗浄剤の溢出による疼痛や,皮下気腫,洗浄器具の破折などであった. 結論:今回の根管洗浄に関するアンケート調査に対し98.7%の診療所が根管洗浄を実施すると回答しており,根管洗浄が必要であるという認識は非常に高いことが確認された.根管洗浄の方法は術者間の差が多く確認され,また,根管洗浄に伴う偶発症の発生が一定数報告された.今後は,根管洗浄方法の標準化やガイドラインの確立を通じて,より安全で効果的な根管洗浄方法の普及促進が望まれる.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.68.113