症例 Head-up tilt testにおいて著明な心停止が誘発された血管迷走神経性失神の1例

症例は23歳,女性.高校生頃より眼前暗黒感を自覚するようになり諸検査にて原因不明のため,head-up tilt test(以下HUT)を施行した.HUTはtilt tableを用い受動的に80度起立位とし,体表面心電図と観血的動脈圧を同時記録し,時間は失神の誘発されるまで最長15分とした.初回のHUTにて5分45秒後突然高度房室ブロックの出現による最長9.7秒間の心室静止をきたし痙攣を伴う失神が誘発され,血管迷走神経性失神と診断した.β遮断薬では失神は完全には予防されず,ジソピラミドは口渇が強く,またその内服により症状の改善は認めなかったため,メチル硫酸アメジニウムの内服後同様にHUTを施行...

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Published in心臓 Vol. 28; no. 6; pp. 510 - 514
Main Authors 蔵野, 康造, 宮田, 彰, 小林, 洋一, 馬場, 隆男, 向井, 英之, 丹野, 郁, 千代田, 和美, 中川, 陽之, 林, 正博, 神保, 芳宏, 長谷川, 武志, 片桐, 敬, 菊嶋, 修示
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1996
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.28.6_510

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Summary:症例は23歳,女性.高校生頃より眼前暗黒感を自覚するようになり諸検査にて原因不明のため,head-up tilt test(以下HUT)を施行した.HUTはtilt tableを用い受動的に80度起立位とし,体表面心電図と観血的動脈圧を同時記録し,時間は失神の誘発されるまで最長15分とした.初回のHUTにて5分45秒後突然高度房室ブロックの出現による最長9.7秒間の心室静止をきたし痙攣を伴う失神が誘発され,血管迷走神経性失神と診断した.β遮断薬では失神は完全には予防されず,ジソピラミドは口渇が強く,またその内服により症状の改善は認めなかったため,メチル硫酸アメジニウムの内服後同様にHUTを施行した.15分間のtilt-up中血圧,心拍数は保たれ,失神は予防された.HUTは血管迷走神経性失神の診断と薬効評価に有用と思われ,またその予防にメチル硫酸アメジニウムが有効であったことから,本症例における失神には血管調節障害の関与が示唆された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.28.6_510