症例 右冠動脈左バルサルバ洞起始症に急性心筋梗塞を合併した2例

右冠動脈左バルサルバ起始症は比較的まれな冠動脈解剖的起始異常であるが,本疾患が突然死,虚血ならびに梗塞発症に関連しているとの報告がされており,最近臨床的に注目されている.今回,私達は右冠動脈左バルサルバ起始症に急性心筋梗塞を合併した2例を経験したので報告する.症例1は60歳,男性.広範な後下壁梗塞例で入院時に心室性頻拍症を認めた.症例2は64歳,男性.急性期に,Killip分類III度の心不全を認めたが,慢性期では梗塞部位は限局性前壁で左心機能は良好であった.注目すべきは不整脈の出現で,症例1では心室性頻拍症の多発,症例2では心房細動の合併を認めた.右冠動脈左バルサルバ起始症に心筋梗塞を合併し...

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Published in心臓 Vol. 24; no. 4; pp. 423 - 427
Main Authors 嶋津, ユミ子, 前田, 利裕, 石田, 哲也, 丹羽, 裕子, 竹下, 泰, 幸松, 晃正, 原, 政英, 犀川, 哲典, 高木, 良三郎, 伊東, 祐信
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1992
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Summary:右冠動脈左バルサルバ起始症は比較的まれな冠動脈解剖的起始異常であるが,本疾患が突然死,虚血ならびに梗塞発症に関連しているとの報告がされており,最近臨床的に注目されている.今回,私達は右冠動脈左バルサルバ起始症に急性心筋梗塞を合併した2例を経験したので報告する.症例1は60歳,男性.広範な後下壁梗塞例で入院時に心室性頻拍症を認めた.症例2は64歳,男性.急性期に,Killip分類III度の心不全を認めたが,慢性期では梗塞部位は限局性前壁で左心機能は良好であった.注目すべきは不整脈の出現で,症例1では心室性頻拍症の多発,症例2では心房細動の合併を認めた.右冠動脈左バルサルバ起始症に心筋梗塞を合併した際は,虚血ならびに梗塞巣の拡大に関与し,心機能を悪化させ,さらには不整脈の誘発等の原因となりうると考えられ,臨床的に注意すべき疾患と考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.24.4_423