症例 冠状静脈洞型心房中隔欠損症(Coronary Sinus ASD)の1剖検例

症例は57歳女性.リウマチ性連合弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症十三尖弁閉鎖不全症)を疑い治療を行ったが,重症心不全,急性腎不全にて死亡した.剖検にて心重量690g,死体血量1900ml,特に右心系に強い拡張性肥大を呈し,本来の冠状静脈洞開口部に一致して1.5×1.8cm大の心房中隔欠損症が見出された.そのため冠状静脈は左房に開口をみた.僧帽弁,三尖弁は弁輸の拡大と,弁尖の軽度の肥厚を呈し,組織学的にもリウマチ性病変はなく,atrialis(心房側弾性線維層)の増生が目立ち相対的閉鎖不全症を思わせる所見を示した. 冠状静脈洞型心房中隔欠損症の報告はきわめてまれで,われわれが調べ得た範囲では7例であり,...

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Published in心臓 Vol. 12; no. 1; pp. 102 - 106
Main Authors 北野, 幸英, 大州, 真一郎, 伊藤, 雄二, 藤岡, 俊宏, 上田, 慶二, 杉浦, 昌也, 村上, 元孝, 小林, 誠一, 大津, 正一, 高野, 勲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1980
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Summary:症例は57歳女性.リウマチ性連合弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症十三尖弁閉鎖不全症)を疑い治療を行ったが,重症心不全,急性腎不全にて死亡した.剖検にて心重量690g,死体血量1900ml,特に右心系に強い拡張性肥大を呈し,本来の冠状静脈洞開口部に一致して1.5×1.8cm大の心房中隔欠損症が見出された.そのため冠状静脈は左房に開口をみた.僧帽弁,三尖弁は弁輸の拡大と,弁尖の軽度の肥厚を呈し,組織学的にもリウマチ性病変はなく,atrialis(心房側弾性線維層)の増生が目立ち相対的閉鎖不全症を思わせる所見を示した. 冠状静脈洞型心房中隔欠損症の報告はきわめてまれで,われわれが調べ得た範囲では7例であり,種々の心奇形を伴っている.本症例は57歳まで生存し得た,きわめてまれな症例と考えられるので,若干の文献的考察を加え報告した.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.12.1_102