症例 経静脈的に下大静脈内で発育した副腎皮質腺腫の1治験例

症例は62歳,女性.高血圧,狭心症にて加療中のところ,心臓超音波検査にて,偶然,下大静脈内に径8mmの高輝度性ポリープ様腫瘤が発見された.下大静脈造影では,副肝静脈分枝レベルにて陰影欠損を認め,下大静脈腫瘍と診断された.悪性腫瘍の全身検索および腫瘍マーカーではいずれも異常を認めなかった.下大静脈原発の平滑筋肉腫を疑い,遠心ポンプを用いた大腿・内頸静脈バイパス下に腫瘍摘出術を施行した.術中エコーにて腫瘤を同定し,その部位で下大静脈を切開したところ,径8mm,黄色,細顆粒状,球形の有茎性腫瘍が認められた.腫瘍の茎は下大静脈背側の分枝に通じ,右副腎の静脈に移行していた.原発は右副腎と考え,副腎下2/...

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Published in心臓 Vol. 34; no. 8; pp. 676 - 680
Main Authors 杉籔, 康憲, 宮本, 明, 渡邊, 隆, 巴, ひかる, 忽滑谷, 通夫, 松山, 秀樹, 桶田, 理喜, 石塚, 幹夫, 福田, 正浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2002
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Summary:症例は62歳,女性.高血圧,狭心症にて加療中のところ,心臓超音波検査にて,偶然,下大静脈内に径8mmの高輝度性ポリープ様腫瘤が発見された.下大静脈造影では,副肝静脈分枝レベルにて陰影欠損を認め,下大静脈腫瘍と診断された.悪性腫瘍の全身検索および腫瘍マーカーではいずれも異常を認めなかった.下大静脈原発の平滑筋肉腫を疑い,遠心ポンプを用いた大腿・内頸静脈バイパス下に腫瘍摘出術を施行した.術中エコーにて腫瘤を同定し,その部位で下大静脈を切開したところ,径8mm,黄色,細顆粒状,球形の有茎性腫瘍が認められた.腫瘍の茎は下大静脈背側の分枝に通じ,右副腎の静脈に移行していた.原発は右副腎と考え,副腎下2/3を部分切除した.病理診断は脂肪細胞化生を示した副腎皮質腺腫であった.我々が検索した限りでは,副腎原発の皮質腺腫が経静脈的に進展し,下大静脈で発育したという報告はなく,極めてまれな症例と考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.34.8_676