症例 合併心奇形のない高齢(75歳)修正大血管転位症の1例

75歳,女性,平成3年7月,前胸部不快感を訴えて来院.既往歴,家族歴に特記すべきこと.貧血,黄疸,チアノーゼ,下腿浮腫等を認めず聴診にて4LSBにLevin3/6収縮期雑音を認めた.心電図では正常洞調律,PQ間隔0.14秒であったが,極端な左軸偏位を認め,V2~V6でR波の増高と陰性T波,II,III,aVFにてQSを認めた.心内圧は異常なく,心拍出量,両室駆出率とも保たれていた.胸腹部CTにて内臓逆位みられず,心血管造影,心エコーでは左側心室は正常右室様構造,右側心室は正常左室様構造を示した.大動脈は肺動脈の左前方に位置し,左側房室弁に中等度の逆流を認めた.冠動脈造影では左側冠動脈は通常の右...

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Published in心臓 Vol. 26; no. 6; pp. 609 - 614
Main Authors 正田, 栄, 長尾, 文之助, 加藤, 秀樹, 内田, 淳夫, 藤岡, 俊久, 山本, 和英, 篠島, 文隆, 後藤, 信雄, 小林, 明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1994
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Summary:75歳,女性,平成3年7月,前胸部不快感を訴えて来院.既往歴,家族歴に特記すべきこと.貧血,黄疸,チアノーゼ,下腿浮腫等を認めず聴診にて4LSBにLevin3/6収縮期雑音を認めた.心電図では正常洞調律,PQ間隔0.14秒であったが,極端な左軸偏位を認め,V2~V6でR波の増高と陰性T波,II,III,aVFにてQSを認めた.心内圧は異常なく,心拍出量,両室駆出率とも保たれていた.胸腹部CTにて内臓逆位みられず,心血管造影,心エコーでは左側心室は正常右室様構造,右側心室は正常左室様構造を示した.大動脈は肺動脈の左前方に位置し,左側房室弁に中等度の逆流を認めた.冠動脈造影では左側冠動脈は通常の右冠動脈様であり,右側冠動脈は通常の左冠動脈様であった.以上により本症例を合併心奇形のない修正大血管転位症,[S,L,L]CardellのB3型と診断した.本症例は合併心奇形,刺激伝導系の異常なく,房室弁閉鎖不全も軽度なことが長期生存の原因と考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.26.6_609