研究会 第23回 河口湖心臓討論会 虚血性心筋障害 心筋虚血における冠血管抵抗の調節部位

冠動脈は灌流圧の低下に対し冠血管抵抗を減少して血流量を維持する。このような調節は微小血管のどの部位において為されるか,さらに心筋虚血に至るまで灌流圧が低下した場合,冠微小血管はどのような反応を示すかは知られていない.これらの検討を目的とし,(1)冠灌流圧低下時の冠細小動脈の管径変化をイヌの左室心筋にて拍動下に計測した.また,心筋虚血に陥りやすい疾患として高血圧症が知られている事より,(2)慢性高血圧症が冠微小血管の抵抗分布に及ぼす影響を,抵抗の調節部位を中心として,ネコを用いた微小血管内圧の直接測定法に依り検討した.その結果,心筋血流量の維持される範囲内で冠灌流圧を下げた時(59±2mmHg)...

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Published in心臓 Vol. 22; no. 3; pp. 318 - 328
Main Authors 金塚, 完, 滝島, 任
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1990
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.22.3_318

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Summary:冠動脈は灌流圧の低下に対し冠血管抵抗を減少して血流量を維持する。このような調節は微小血管のどの部位において為されるか,さらに心筋虚血に至るまで灌流圧が低下した場合,冠微小血管はどのような反応を示すかは知られていない.これらの検討を目的とし,(1)冠灌流圧低下時の冠細小動脈の管径変化をイヌの左室心筋にて拍動下に計測した.また,心筋虚血に陥りやすい疾患として高血圧症が知られている事より,(2)慢性高血圧症が冠微小血管の抵抗分布に及ぼす影響を,抵抗の調節部位を中心として,ネコを用いた微小血管内圧の直接測定法に依り検討した.その結果,心筋血流量の維持される範囲内で冠灌流圧を下げた時(59±2mmHg),約100μm以下の細小動脈のみに管径の拡張が認められ,これより上流の小動脈径は不変であった.さらに虚血が起こるまで,冠灌流圧を下げた場合(38±lmmHg),100μm以下の細小動脈の拡張と同時に,これより上流の小動脈に収縮が認められた.ニトログリセリンの投与は,このような小動脈の収縮を緩和せしめた.慢性高血圧においては,対照群に比し約150μm以下の細小動脈のみに,著明な血管抵抗の増加が認められた.これらの結果より以下の結論を得た.(1)冠灌流圧の低下に対し100μm以下の細小動脈の拡張により血流量は維持される.(2)著明な冠灌流圧の低下時には,これらの細小動脈の拡張と同時に,100μm以上の小動脈は最大拡張に至らずに収縮する.(3)慢性高血圧症においては,冠血流量の維持に重要な部位を含む150μm以下の細小動脈のみに著明な抵抗の増加を認め,虚壷に陥りやすい一因と考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.22.3_318