症例 運動により誘発され,発作時異常Q波を伴う,正常冠動脈異型狭心症の1例

症例は37歳,男性.朝の軽い運動での胸痛発作を主訴とする.発作時の心電図は,前胸部誘導(V1~5)でST上昇,V1~3で異常Q波の出現が見られた.心電図変化は発作の消失とともに回復した.トレッドミル運動負荷試験は陽性で,午前,午後とも,V3でST上昇,異常Q波の出現を伴う胸痛発作が誘発されたが,午前と午後でexercise toleranceに著明な日内変動が認められた.propranololはこの発作の出現を抑制できず,diltiazemは完全に抑制した.エルゴノビン試験は陽性で,発作中,冠動脈造影上,左前下行枝起始部の完全閉塞が見られたがニトログリセリン投与後は,有意な器質的狭窄を認めず攣...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in心臓 Vol. 14; no. 6; pp. 798 - 803
Main Authors 三羽, 邦久, 岸本, 千晴, 神原, 啓文, 河合, 忠一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1982
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:症例は37歳,男性.朝の軽い運動での胸痛発作を主訴とする.発作時の心電図は,前胸部誘導(V1~5)でST上昇,V1~3で異常Q波の出現が見られた.心電図変化は発作の消失とともに回復した.トレッドミル運動負荷試験は陽性で,午前,午後とも,V3でST上昇,異常Q波の出現を伴う胸痛発作が誘発されたが,午前と午後でexercise toleranceに著明な日内変動が認められた.propranololはこの発作の出現を抑制できず,diltiazemは完全に抑制した.エルゴノビン試験は陽性で,発作中,冠動脈造影上,左前下行枝起始部の完全閉塞が見られたがニトログリセリン投与後は,有意な器質的狭窄を認めず攣縮が証明された.本症例は正常冠動脈異型狭心症でありながら,午後の運動によっても発作が誘発され,また,発作時一過性異常Q波の出現をみることで, 非常にまれな症例であり,診断および治療上,多くの示唆が得られたので報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.14.6_798