症例 先天性左冠動脈口閉鎖症の1乳児例

先天性左冠動脈口閉鎖は極めてまれな疾患であるが,著者らは生後4カ月に重症の心筋梗塞で発症した1例を経験した.大動脈造影で左冠動脈口部にblind dimpleを認め,左冠動脈は右冠動脈円錐枝の側副血行路を介し,逆行性に造影されdimpleの直前で盲端に終わっており,本症と診断した.経過中,頻発する致死性不整脈と心筋梗塞の再発をきたし,緊急手術として大伏在静脈を用いたA-Cバイパス術を施行したが左心不全のため死亡した. 乳児例は本例を含め6例(手術例4例)の報告があるが,全例死亡し予後は極めて不良である.乳児例は内科的治療のみでは側副血行の発育は期待できず,心虚血症状が進行性であるので早期診断,...

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Published in心臓 Vol. 24; no. 8; pp. 937 - 943
Main Authors 伊藤, 忠彦, 山下, 淳, 鈴木, 雪子, 石田, 明, 後藤, 敦子, 原田, 健二, 高田, 五郎, 阿部, 忠昭, 島田, 堅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1992
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Summary:先天性左冠動脈口閉鎖は極めてまれな疾患であるが,著者らは生後4カ月に重症の心筋梗塞で発症した1例を経験した.大動脈造影で左冠動脈口部にblind dimpleを認め,左冠動脈は右冠動脈円錐枝の側副血行路を介し,逆行性に造影されdimpleの直前で盲端に終わっており,本症と診断した.経過中,頻発する致死性不整脈と心筋梗塞の再発をきたし,緊急手術として大伏在静脈を用いたA-Cバイパス術を施行したが左心不全のため死亡した. 乳児例は本例を含め6例(手術例4例)の報告があるが,全例死亡し予後は極めて不良である.乳児例は内科的治療のみでは側副血行の発育は期待できず,心虚血症状が進行性であるので早期診断,早期外科治療が必要と思われた.また診断上問題となる左冠動脈肺動脈起始症との鑑別点として,大動脈造影でdimpleを認めることが有用と思われた.乳児例の臨床像,治療上の問題点を中心に考察し報告した.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.24.8_937