症例 僧帽弁逸脱による僧帽弁閉鎖不全を伴った不全型Behcet病の1例

症例は60歳,女性.昭和62年初めて心雑音を指摘された.平成2年に,回腸末端の単純性潰瘍として手術を受けたが,その後も腹痛・下血を繰り返し,平成3年から,口腔内アフタが頻発,外陰部潰瘍,結節性紅斑様皮疹が出現した.心病変は,心尖部にLevine IV°の収縮期雑音を聴取し,M-mode,断層心エコー図上,僧帽弁後尖の左房内への落ち込みを認めた.経食道心エコー図では,腱索断裂を伴わない後尖middle scallapのprolapseを認め,カラー・ドプラ図上,弁逆流のgradeはII°(moderate)であった.なお他の心病変は認めなかった.以上より,本例は心病変および消化管病変を伴った不全...

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Published in心臓 Vol. 26; no. 8; pp. 846 - 851
Main Authors 守谷, 昭彦, 小出, 司郎策, 池田, 彰彦, 藤井, 信一郎, 束村, 正, 山中, 羊吾
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1994
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.26.8_846

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Summary:症例は60歳,女性.昭和62年初めて心雑音を指摘された.平成2年に,回腸末端の単純性潰瘍として手術を受けたが,その後も腹痛・下血を繰り返し,平成3年から,口腔内アフタが頻発,外陰部潰瘍,結節性紅斑様皮疹が出現した.心病変は,心尖部にLevine IV°の収縮期雑音を聴取し,M-mode,断層心エコー図上,僧帽弁後尖の左房内への落ち込みを認めた.経食道心エコー図では,腱索断裂を伴わない後尖middle scallapのprolapseを認め,カラー・ドプラ図上,弁逆流のgradeはII°(moderate)であった.なお他の心病変は認めなかった.以上より,本例は心病変および消化管病変を伴った不全型Behcet病と診断した. Behcet病に伴う心病変は弁膜症を含め心全体に及ぶ.近年,我が国では大動脈弁閉鎖不全,Valsalva洞動脈瘤の報告が増加しているが,諸外国では僧帽弁逸脱(Mitral Valve Prolapse:以下MVP)が注目されてきた.本疾患に伴う中等度以上の僧帽弁閉鎖不全(Mitral Regurgitation:以下MR)は9例の報告があるが,MR単独例は自験例のみで,他にMVPによる報告を認めない.MVPとりわけ後尖例での逸脱弁尖部位,腱索断裂合併の有無の診断には,経食道心エコー法がきわめて有用であった.その心病変に対するSteroid療法は定着してきたが,MRへの効果は不明である.自験例は,同剤にて加療中であるが,MRの進行を認めており,今後,手術療法も考慮しながら経過観察を行う必要がある.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.26.8_846