症例 一時留置型下大静脈フィルターが有用であった肺血栓塞栓症の1例

我々は,下肢ギプス固定が原因と思われる肺血栓塞栓症の再発予防に,一時留置型下大静脈フィルターが有用であった1例を経験した.症例は63歳,女性で,左前十字靱帯損傷のために左下腿ギプス固定を受けた.固定後下肢のチアノーゼがみられたためギプス切開減圧を受け,その3日後肺血栓塞栓症を発症した.肺血栓塞栓症によるショックからは血栓溶解療法にて離脱しえた. ギプス固定の解除後に残存血栓による肺血栓塞栓症の再発が考えられたため,一時留置型下大静脈フィルターを留置した.フィルターを留置後にギプス解除を行い,9日後にフィルター造影にて捕捉された血栓を確認した. フィルター内血栓に対し血栓溶解療法を行い,血栓を縮...

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Published in心臓 Vol. 33; no. 4; pp. 293 - 298
Main Authors 瀬口, 理, 藤田, 英樹, 粟野, 孝次郎, 森, 孝夫, 江本, 隆一, 服部, かおる, 寺島, 充康, 大橋, 佳隆, 稲留, 哲也, 前田, 和美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2001
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Summary:我々は,下肢ギプス固定が原因と思われる肺血栓塞栓症の再発予防に,一時留置型下大静脈フィルターが有用であった1例を経験した.症例は63歳,女性で,左前十字靱帯損傷のために左下腿ギプス固定を受けた.固定後下肢のチアノーゼがみられたためギプス切開減圧を受け,その3日後肺血栓塞栓症を発症した.肺血栓塞栓症によるショックからは血栓溶解療法にて離脱しえた. ギプス固定の解除後に残存血栓による肺血栓塞栓症の再発が考えられたため,一時留置型下大静脈フィルターを留置した.フィルターを留置後にギプス解除を行い,9日後にフィルター造影にて捕捉された血栓を確認した. フィルター内血栓に対し血栓溶解療法を行い,血栓を縮小させた後フィルターを抜去した.フィルターの留置および抜去は簡便で,留置中も歩行可能であった.肺血栓塞栓症は本症例のように一時的原因により発症することが少なくなく,一時留置型下大静脈フィルターは臨床上有用であると考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.33.4_293