症例 冠動脈2枝に急性期閉塞を生じたと思われる心筋梗塞の1例

症例は73歳の女性.胸痛出現当初は,心電図上II,HI,aVFのST上昇を認め,時間経過とともにV2からV6のSTも上昇してきた.急性心筋梗塞の診断で,coronary interventionを目的に緊急冠動脈造影を行った.造影上Seg.4PDとSeg.7で完全閉塞であり,心電図上のST上昇誘導とも一致するため,双方を責任冠動脈とする急性心筋梗塞と判断した.より広い灌流域をもつと思われるSeg.7の病変に対しPTCRを行ったが奏功せず,急激に血行動態が悪化し,患者は心不全のため死亡した.本例は,冠動脈造影上塞栓を示唆する充盈欠損を呈しており,他の部位に動脈硬化性狭窄病変を認めないこと,基礎疾...

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Published in心臓 Vol. 24; no. 6; pp. 695 - 700
Main Authors 井門, 明, 加藤, 淳一, 佐藤, 元彦, 長根, 忠人, 大崎, 純三, 館田, 邦彦, 小野寺, 壮吉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1992
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Summary:症例は73歳の女性.胸痛出現当初は,心電図上II,HI,aVFのST上昇を認め,時間経過とともにV2からV6のSTも上昇してきた.急性心筋梗塞の診断で,coronary interventionを目的に緊急冠動脈造影を行った.造影上Seg.4PDとSeg.7で完全閉塞であり,心電図上のST上昇誘導とも一致するため,双方を責任冠動脈とする急性心筋梗塞と判断した.より広い灌流域をもつと思われるSeg.7の病変に対しPTCRを行ったが奏功せず,急激に血行動態が悪化し,患者は心不全のため死亡した.本例は,冠動脈造影上塞栓を示唆する充盈欠損を呈しており,他の部位に動脈硬化性狭窄病変を認めないこと,基礎疾患に心房粗動があり,完全房室ブロックのため脈拍数40/分前後の徐脈が続いていたこと,脳梗塞の既往があること,発症までに狭心症発作の既往がなかったこと,UKが全く無効であったことなどを考えると,血栓塞栓が冠動脈に流入し発症したことが推測された. 冠動脈塞栓症が原因と考えられ,右冠動脈と左冠動脈の2枝を責任血管とする心筋梗塞は,我々が検索し得た限りその報告例はなく,きわめて貴重な症例と思われる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.24.6_695