臨床 右房原発性血管肉腫の1例

近年,悪性心臓腫瘍の生前診断率は26%台まで向上してきているが,いまだ確立された治療はなく,生存期間を延長させることが難しい現状にある.そこで,開胸生検による診断確定後24カ月間と比較的長期間にわたって生存した右房原発性血管肉腫の1例に文献的考察を加えた.症例は33歳,男性.心タンポナーデによる心不全症状にて発症し,入院時に施行した心エコー法やMRIにより右房内腫瘤とcauliflower状の内部構造を確認した.また,冠動脈造影で右冠動脈からの栄養血管形成と腫瘍濃染像を認め,開胸手術時に血管肉腫との組織診断を得た.その後,右房原発巣に対する放射線療法の縮小効果を認めていたが,約12カ月後に右肺...

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Published in心臓 Vol. 27; no. 4; pp. 337 - 341
Main Authors 後藤, 由和, 熱海, 裕之, 門脇, 謙, 佐藤, 匡也, 阿部, 芳久, 中込, 晃, 熊谷, 正之, 阿部, 忠昭, 杉山, 達朗, 増田, 弘毅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1995
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Summary:近年,悪性心臓腫瘍の生前診断率は26%台まで向上してきているが,いまだ確立された治療はなく,生存期間を延長させることが難しい現状にある.そこで,開胸生検による診断確定後24カ月間と比較的長期間にわたって生存した右房原発性血管肉腫の1例に文献的考察を加えた.症例は33歳,男性.心タンポナーデによる心不全症状にて発症し,入院時に施行した心エコー法やMRIにより右房内腫瘤とcauliflower状の内部構造を確認した.また,冠動脈造影で右冠動脈からの栄養血管形成と腫瘍濃染像を認め,開胸手術時に血管肉腫との組織診断を得た.その後,右房原発巣に対する放射線療法の縮小効果を認めていたが,約12カ月後に右肺転移巣が出現し,最終的にはその拡大による呼吸不全で死亡した.剖検標本では,血管肉腫の一部は右室および左室に浸潤していたが,右房原発巣の大きさは診断確定時のそれとほぼ同等で,死亡時まで血行動態的な影響度は少ないものと考えられた. 本例は,我々が調査した心臓原発性血管肉腫203例中,放射線療法の効果を示唆する最長期生存例であった.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.27.4_337