研究 生検肺の組織学的計測によるダウン症候群の肺血管床の検討

肺高血圧症が進行しやすいといわれるダウン症候群心疾患児の肺血管床の特徴を調べるために,心疾患手術時に肺生検を行い,組織学的計測を行った.対象は2歳以下を中心とした左右短絡型心疾患をもっダウン症候群(ダウン群)13例と染色体正常例(対照群)24例である.弾性線維染色と筋線維染色を行った組織標本において,全周性に中膜筋層と内弾性板をもつ血管を動脈と規定した. 1)肺胞数に対する動脈数の比,2)外径により0~30μm, 31~50μm, 51~100 μm,100~150μm,150μm以上の5群に分けた,各動脈群の数の全体における比率,3)各動脈群の中膜の厚さ(外径比)を測定し,肺高血圧の程度と比...

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Published in心臓 Vol. 21; no. 8; pp. 928 - 933
Main Authors 尾形, 寛, 小原, 敏生, 藤山, 純一, 石沢, 栄次, 羽根田, 潔, 沢井, 高志, 吉田, 芳郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1989
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.21.8_928

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Summary:肺高血圧症が進行しやすいといわれるダウン症候群心疾患児の肺血管床の特徴を調べるために,心疾患手術時に肺生検を行い,組織学的計測を行った.対象は2歳以下を中心とした左右短絡型心疾患をもっダウン症候群(ダウン群)13例と染色体正常例(対照群)24例である.弾性線維染色と筋線維染色を行った組織標本において,全周性に中膜筋層と内弾性板をもつ血管を動脈と規定した. 1)肺胞数に対する動脈数の比,2)外径により0~30μm, 31~50μm, 51~100 μm,100~150μm,150μm以上の5群に分けた,各動脈群の数の全体における比率,3)各動脈群の中膜の厚さ(外径比)を測定し,肺高血圧の程度と比較検討した. その結果,対照群では肺動脈圧の上昇と共に,外径50μm以下の小動脈,特に30μm以下の小動脈が著しく増加することにより,動脈の密度が増し,どのレベルの肺動脈でも中膜肥厚が進むという傾向が見られた.一方ダウン群では,肺動脈圧上昇に対する肺血管床の反応が対照群と異なり,肺動脈圧と動脈の密度には殆ど相関がなく,肺高血圧が進行しても,動脈系の構成に大きな変化は見られず,中膜肥厚もあまり進まなかった.このためダウン群の肺動脈系では,圧負荷に対して内膜肥厚が起こりやすく,肺動脈閉塞性病変が早期に進行してくることが予想され,早い時期の手術が必要と思われた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.21.8_928