症例 右室優位型肥大型心筋症の1女児例

右室腔内に圧差を認め,左室内圧は正常な右室儂位型肥大型心筋症と診断した11歳8カ月の女児例を経験した. 本例は3歳時より心雑音を指摘され,学校心臓検診では肺動脈狭窄症と診断されたが,特に症状なく放置されていた.11歳8カ月時運動時の胸部圧迫感を主訴として受診した.超音波断層検査にて右室自由壁と心室中隔の著しい肥厚を認めた.心臓カテーテル検査では右室流出部と流入部の間に17mmHgの圧差を認め,収縮期に流出路狭窄を示していた.一方,左室流出路狭窄は認めなかった.心内膜心筋生検では右室心筋細胞の著しい肥大・錯綜配列および間質結合組織の線維化の増加を認め,左室心筋細胞には軽度肥大のみを認めた, 右心...

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Published in心臓 Vol. 20; no. 5; pp. 593 - 598
Main Authors 中島, 徹, 広瀬, 一, 佐野, 哲也, 有沢, 淳, 中埜, 粛, 藪内, 百治, 河本, 知秀, 松下, 享, 倉橋, 浩樹, 小川, 實, 川島, 康生, 萱谷, 太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1988
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.20.5_593

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Summary:右室腔内に圧差を認め,左室内圧は正常な右室儂位型肥大型心筋症と診断した11歳8カ月の女児例を経験した. 本例は3歳時より心雑音を指摘され,学校心臓検診では肺動脈狭窄症と診断されたが,特に症状なく放置されていた.11歳8カ月時運動時の胸部圧迫感を主訴として受診した.超音波断層検査にて右室自由壁と心室中隔の著しい肥厚を認めた.心臓カテーテル検査では右室流出部と流入部の間に17mmHgの圧差を認め,収縮期に流出路狭窄を示していた.一方,左室流出路狭窄は認めなかった.心内膜心筋生検では右室心筋細胞の著しい肥大・錯綜配列および間質結合組織の線維化の増加を認め,左室心筋細胞には軽度肥大のみを認めた, 右心室のみに血行動態の異常を示し,左室内圧は正常な肥大型心筋症は極めてまれである.本例では形態的に右室自由壁と心室中隔の著しい肥厚を認め,肥大した心室中隔の右室側への突出を認め,いわゆる右室に限局した肥大型心筋症の形態を示した.しかし,組織学的には左室心筋にも変化を認めたことから,成人で経験する肥大型心筋症のearlystageとも考えられ,本症の本態を理解する上で興味ある1例と思われる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.20.5_593