大変革期を迎えた自動車産業における新たなサプライチェーンマネジメントの課題

我が国の工業製品は“メイド・イン・ジャパン”と称される高い品質を誇るが,それはサプライヤの厳格な品質管理によって支えられている部分が大きい.我が国の自動車生産のサプライチェーンはTier N(階層不明)と表される多階層の巨大ピラミッド構造となっている. 昨今,サプライチェーン攻撃がサイバーセキュリティ上の大きな脅威となっているが,すでに自動車産業でもサプライヤで発生したインシデントによって供給先の自動車メーカーの全工場の操業が停止する事態が発生している. IoT化が加速する中,自動車産業はモビリティビジネスへの大変革期を迎えている.車両の開発はソフトウエア中心の時代へと移行しつつあり,サイバー...

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Published in日本セキュリティ・マネジメント学会誌 Vol. 38; no. 3; pp. 20 - 27
Main Author 中島, 一樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本セキュリティ・マネジメント学会 2024
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ISSN1343-6619
2434-5504
DOI10.32230/jssmjournal.38.3_20

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Summary:我が国の工業製品は“メイド・イン・ジャパン”と称される高い品質を誇るが,それはサプライヤの厳格な品質管理によって支えられている部分が大きい.我が国の自動車生産のサプライチェーンはTier N(階層不明)と表される多階層の巨大ピラミッド構造となっている. 昨今,サプライチェーン攻撃がサイバーセキュリティ上の大きな脅威となっているが,すでに自動車産業でもサプライヤで発生したインシデントによって供給先の自動車メーカーの全工場の操業が停止する事態が発生している. IoT化が加速する中,自動車産業はモビリティビジネスへの大変革期を迎えている.車両の開発はソフトウエア中心の時代へと移行しつつあり,サイバーセキュリティは品質上の主要な構成要素となっている.こうしたパラダイムシフトに伴い,コネクテッドカーに関わる自動車メーカーやサプライヤは従来のビジネス上のサプライチェーンマネジメントに加えて,ソフトウエアのサプライチェーンマネジメントが喫緊の経営課題となっている.しかし中堅規模以下のサプライヤにはリソースが不足しており,自力でサイバーセキュリティに関わる要求に応えることが極めて難しい. そこで自動車業界では業界全体でサプライヤのサイバーセキュリティを推し進めている.その一環としてコネクテッドカーの安心・安全を守るために,一般社団法人Japan Automotive ISACを設立した.ここでは通信事業者やセキュリティベンダ,コンサルティング会社など業界外の有識者の協力を得て,より高次元での取り組みを実現している.さらに2024年に入って,産業機械メーカーや自動運転の新興企業による新規加盟が続いており,新たな進化が期待されている.
ISSN:1343-6619
2434-5504
DOI:10.32230/jssmjournal.38.3_20