症例 抗凝固療法と在宅酸素療法が著効した慢性肺血栓塞栓症の1例
症例は50歳,女性.2年来次第に増悪する労作時息切れのため受診.低酸素血症と心電図,心エコーにて右心負荷所見を認めたため入院.肺血流シンチにて両肺の多発性血流欠損像を認め,心臓カテーテル検査にて著明な肺高血圧(平均圧57mmHg)と肺動脈造影にて区域枝以下の途絶像,血栓像と肺血管床の減少を認めたため,慢性肺血栓塞栓症と診断.塞栓源としては下肢静脈造影にて右下腿深部静脈閉塞を認めた.ワーファリン内服と酸素療法を開始し,入院4カ月後には平均肺動脈圧は50mmHgであったが,酸素吸入後には35mmHgまで減少する良好な反応を示したため,在宅酸素療法を開始し退院した.以後,自覚症状は改善し,5年後の入...
Saved in:
Published in | 心臓 Vol. 30; no. 9; pp. 581 - 586 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
1998
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo1969.30.9_581 |
Cover
Summary: | 症例は50歳,女性.2年来次第に増悪する労作時息切れのため受診.低酸素血症と心電図,心エコーにて右心負荷所見を認めたため入院.肺血流シンチにて両肺の多発性血流欠損像を認め,心臓カテーテル検査にて著明な肺高血圧(平均圧57mmHg)と肺動脈造影にて区域枝以下の途絶像,血栓像と肺血管床の減少を認めたため,慢性肺血栓塞栓症と診断.塞栓源としては下肢静脈造影にて右下腿深部静脈閉塞を認めた.ワーファリン内服と酸素療法を開始し,入院4カ月後には平均肺動脈圧は50mmHgであったが,酸素吸入後には35mmHgまで減少する良好な反応を示したため,在宅酸素療法を開始し退院した.以後,自覚症状は改善し,5年後の入院時には血液ガスの改善を認め,心臓カテーテル検査でもroom airにて平均肺動脈圧24mmHgと著明な改善をみた.高度の肺高血圧を合併する慢性肺血栓塞栓症の予後は不良とされるが,抗凝固療法と在宅酸素療法が著効する症例もあり,本症例のような肺動脈血栓内膜除去術の不適応例では特に試みるべき治療であると考えられる. |
---|---|
ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo1969.30.9_581 |