症例 ベラプロストとオルプリノン長期投与により,カテコラミンより離脱可能となった原発性肺高血圧症の1例

失神・ショックを繰り返した原発性肺高血圧症(PPH)の女児に対して,経ロプロスタグランジンI2(PGI2)製剤ベラプロストとホスポジテステラーゼ(PDE)III阻害薬オルプリノンの長期投与を行い,症状の安定を得た.症例は生来健康な8歳女児であったが,意識消失発作を認め入院となる.心臓超音波検査にて80mmHg(推定)と著明な右室圧上昇を認め,酸素投与とドブタミン(DOB)投与を開始した.血液検査ではBNP177pg/mlと高値を示し,胸部X線では左第2弓の突出と末梢血管影の狭小化を認め,心胸郭比は0.55であった.心電図は右軸偏位・右室肥大で,心臓超音波検査でも右房右室の拡大,右室圧上昇を認め...

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Published in心臓 Vol. 35; no. 9; pp. 651 - 656
Main Authors 安川, 久美, 羽鳥, 誉之, 地引, 利昭, 本田, 隆文, 鈴木, 一広, 佐地, 勉, 小穴, 慎二, 上砂, 光裕, 河野, 陽一, 寺井, 勝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2003
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.35.9_651

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Summary:失神・ショックを繰り返した原発性肺高血圧症(PPH)の女児に対して,経ロプロスタグランジンI2(PGI2)製剤ベラプロストとホスポジテステラーゼ(PDE)III阻害薬オルプリノンの長期投与を行い,症状の安定を得た.症例は生来健康な8歳女児であったが,意識消失発作を認め入院となる.心臓超音波検査にて80mmHg(推定)と著明な右室圧上昇を認め,酸素投与とドブタミン(DOB)投与を開始した.血液検査ではBNP177pg/mlと高値を示し,胸部X線では左第2弓の突出と末梢血管影の狭小化を認め,心胸郭比は0.55であった.心電図は右軸偏位・右室肥大で,心臓超音波検査でも右房右室の拡大,右室圧上昇を認めた.その後も状態は非常に不安定であったため,心臓カテーテル検査は施行せず,酸素投与,DOB,ベラプロスト内服,ヘパリンによる抗凝固療法にて治療を開始した.その後,DOB減量を試みるが腹痛等を訴え減量中止し,3回目の減量中,突然ショック状態となった.このため,肺血管拡張および心機能補助を目的にオルプリノンの併用を開始した.これらの治療により労作時息切れなどの症状は消失し,心臓超音波検査による推定右室圧やBNPといった検査データも正常化した.その後DOBより離脱,さらにオルプリノンも持続静注より週2回の間欠投与としたが,症状および検査の増悪を認めていない.急性増悪期の治療として,ベラプロストとオルプリノンの併用は試みる価値のある治療と思われる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.35.9_651