症例 心血管手術後真菌性心筋炎の2剖検例

心血管手術後に発生した真菌性(Candida albicans)心筋炎の2剖検例を報告する.第1例は両大血管右室起始症に対する心内トンネル形成術後65日目で死亡した症例で,パッチ上の新生心内膜より真菌の増殖がみられ,肺,大動脈弁戸をふさぐ形で真菌性腫瘤が認められた.それによる心筋炎の発症と考えられた.第2例は腹部大動脈瘤破裂に対するグラフト植え込み手術後3ヵ月目に死亡した症例で,グラフト周囲から後腹膜全域の化膿性炎症が尿管,腎孟におよび,それらの狭窄,拡張を起こし,下部尿路で臨床的に検出されたCandida albicansによる炎症がSuperimposeし,血行性に心筋におよんだものと考え...

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Published in心臓 Vol. 12; no. 9; pp. 982 - 986
Main Authors 由谷, 親夫, 呉, 聡栄, 神谷, 哲郎, 越後, 茂之, 江郷, 洋一, 鬼頭, 義治, 中島, 伸之, 内藤, 泰顕, 藤田, 毅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1980
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Summary:心血管手術後に発生した真菌性(Candida albicans)心筋炎の2剖検例を報告する.第1例は両大血管右室起始症に対する心内トンネル形成術後65日目で死亡した症例で,パッチ上の新生心内膜より真菌の増殖がみられ,肺,大動脈弁戸をふさぐ形で真菌性腫瘤が認められた.それによる心筋炎の発症と考えられた.第2例は腹部大動脈瘤破裂に対するグラフト植え込み手術後3ヵ月目に死亡した症例で,グラフト周囲から後腹膜全域の化膿性炎症が尿管,腎孟におよび,それらの狭窄,拡張を起こし,下部尿路で臨床的に検出されたCandida albicansによる炎症がSuperimposeし,血行性に心筋におよんだものと考えられた. これら2例はいずれも全経過を通じて,発熱があり,再三の血液培養でも検出されず,しかも種々の抗生物質で強力に治療されており,手術中に空気中がら,あるいは気管からまたは多数のラインよりの真菌の侵入が考えられる.これらの真菌性心筋炎の発生病理に関しては,第1例目のごとく心臓手術後に圧倒的に多くみられる真菌性心内膜炎の理由として,人工心内形成物上に伸びてくる新生心内膜の関与が考えられ,第2例目では,血行性に真菌が心臓におよんだと考えられ,心内膜炎の経由とは異なった病態が想像された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.12.9_982