症例 進行性肺血管閉塞性病変を合併した閉鎖過程にある心室中隔欠損症の1学童例

心室中隔欠損症において膜性部中隔瘤は自然閉鎖の過程で形成されると考えられている.我々は膜性部中隔瘤を形成し閉鎖過程にありながらも,肺血管閉塞性病変を合併した1学童例を経験した. 症例は15歳の男児で,生後1カ月時に心雑音を指摘され心室中隔欠損症の診断を受けたが,無症状のため親の判断で放置されていた.15歳時に肺高血圧症の合併を疑い心臓カテーテル検査を施行した.左室造影にて膜性部中隔瘤を形成した心室中隔欠損症とjet状のわずかな短絡血流を認めた.肺動脈圧は65/40(53)mmHg,左右短絡率25%,肺体血流比1.3,肺体血管抵抗比0.41,肺血管抵抗値4.6unit・m2であった.欠損孔は小さ...

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Published in心臓 Vol. 28; no. 2; pp. 117 - 123
Main Authors 田代, 雅彦, 小林, 富男, 曽根, 克彦, 森川, 昭廣, 小林, 敏宏, 竹内, 東光
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1996
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.28.2_117

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Summary:心室中隔欠損症において膜性部中隔瘤は自然閉鎖の過程で形成されると考えられている.我々は膜性部中隔瘤を形成し閉鎖過程にありながらも,肺血管閉塞性病変を合併した1学童例を経験した. 症例は15歳の男児で,生後1カ月時に心雑音を指摘され心室中隔欠損症の診断を受けたが,無症状のため親の判断で放置されていた.15歳時に肺高血圧症の合併を疑い心臓カテーテル検査を施行した.左室造影にて膜性部中隔瘤を形成した心室中隔欠損症とjet状のわずかな短絡血流を認めた.肺動脈圧は65/40(53)mmHg,左右短絡率25%,肺体血流比1.3,肺体血管抵抗比0.41,肺血管抵抗値4.6unit・m2であった.欠損孔は小さく膜性部中隔瘤を形成し閉鎖過程にあると思われ根治術はせず,α遮断薬の投与で経過観察をした.その後も肺高血圧症の進行を認め,1年後の心臓カテーテル検査では,肺動脈圧や肺血管抵抗値は前回とほぼ同値であったが,血管拡張薬に対する反応性はなく,肺動脈造影で肺血管閉塞性病変の合併を示す所見を認めた.血管作動性プロスタノイドの測定で,血管収縮作用と血小板凝集作用を有するthromboxane A2が肺動脈内で相対的な過剰状態にあると思われた.肺血管閉塞性病変を合併した原因として,心室中隔欠損症による二次的な変化とは考えがたく,肺動脈内皮細胞機能の異常によると推測された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.28.2_117