症例 右肺動脈への高度圧排を示した解離性大動脈瘤の1例

症例は69歳,男性.主訴は左胸背部痛,胸部X線写真上左第1号の拡大,左肺野のみの軽度肺水腫様所見を示し,動脈血ガスはPaO2 54.8mmHg,PaCO2 34.7mmHgと低酸素血症を示していた.胸部CT検査にて,解離性大動脈瘤と診断したが,酸素投与にもかかわらず低酸素血症がさらに増悪したため肺梗塞を疑い,右心カテーテル検査および肺動脈造影を行った.肺動脈圧は,51/12(25)mmHgと中等度の肺高血圧を示し,右主肺動脈は高度の狭窄が認められた.大動脈造影では上行大動脈遠位部からのエントリーおよび逆行性解離が認められた.以上により,解離した上行大動脈が右肺動脈を圧排し,肺動脈血流の減少によ...

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Published in心臓 Vol. 25; no. 8; pp. 981 - 985
Main Authors 高橋, 将文, 高橋, 和彦, 松沢, 浩, 武田, 久尚, 山田, 隆之, 伊藤, 久雄, 田所, 正路
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1993
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Summary:症例は69歳,男性.主訴は左胸背部痛,胸部X線写真上左第1号の拡大,左肺野のみの軽度肺水腫様所見を示し,動脈血ガスはPaO2 54.8mmHg,PaCO2 34.7mmHgと低酸素血症を示していた.胸部CT検査にて,解離性大動脈瘤と診断したが,酸素投与にもかかわらず低酸素血症がさらに増悪したため肺梗塞を疑い,右心カテーテル検査および肺動脈造影を行った.肺動脈圧は,51/12(25)mmHgと中等度の肺高血圧を示し,右主肺動脈は高度の狭窄が認められた.大動脈造影では上行大動脈遠位部からのエントリーおよび逆行性解離が認められた.以上により,解離した上行大動脈が右肺動脈を圧排し,肺動脈血流の減少により肺梗塞様症状をきたしたものと診断し,緊急に上行~弓部大動脈人工血管置換術を施行した. 急性解離性大動脈瘤の合併症において,肺動脈の狭窄および閉塞は極めてまれな合併症である.また,もし肺梗塞と誤診され,抗血栓抗凝固療法が行われた場合には致命的となりうることがあるため,まれではあるが非常に重要な合併症と考えられる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.25.8_981