症例 完全房室ブロックをきたし体内式ペースメーカー植え込みを必要とした急性心筋炎の1例

症例は34歳の男性.昭和63年6月28日,感冒症状に続いて,呼吸困難,胸内苦悶感が出現した.某病院で心電図にて完全房室ブロックを指摘され,7月5日当院へ転医した.心電図にて,低電位,ST・T変化,心室内伝導障害,異常Q波を認め,胸部X線像にて心拡大,肺うっ血を認めた.胸痛発作がなく感冒様前駆症状を認めたこと,心筋由来の逸脱酵素の上昇,心断層エコー所見,冠動脈造影検査にて冠動脈に狭窄なく左室造影にて左室全体にhypokinesisを認めたことなどから急性心筋炎と考えられた.体外式ペースメーカーを挿入して経過を見ていたが,房室伝導障害が改善しないため7月19日体内式ペースメーカー植え込みを行った....

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Published in心臓 Vol. 22; no. 8; pp. 986 - 992
Main Authors 柴田, 哲男, 遠藤, 宏, 塩津, 初壽, 佐々木, 達夫, 保浦, 賢三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1990
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Summary:症例は34歳の男性.昭和63年6月28日,感冒症状に続いて,呼吸困難,胸内苦悶感が出現した.某病院で心電図にて完全房室ブロックを指摘され,7月5日当院へ転医した.心電図にて,低電位,ST・T変化,心室内伝導障害,異常Q波を認め,胸部X線像にて心拡大,肺うっ血を認めた.胸痛発作がなく感冒様前駆症状を認めたこと,心筋由来の逸脱酵素の上昇,心断層エコー所見,冠動脈造影検査にて冠動脈に狭窄なく左室造影にて左室全体にhypokinesisを認めたことなどから急性心筋炎と考えられた.体外式ペースメーカーを挿入して経過を見ていたが,房室伝導障害が改善しないため7月19日体内式ペースメーカー植え込みを行った.退院後の心断層エコーにて心室中隔基部のthinning(厚さ3mm)を,201Tl心筋スキャンにて心室中隔基部に一致して10wuptakeを認めたことから,発症時心基部に強い炎症,壊死が起こり,長期にわたって炎症,壊死が存在したと考えられた.これまでの報告では,心筋炎の急性期に201Tl心筋スキャンで201Tlの不均一な取り込みを認めても,慢性期には正常化していたとの報告が多く,本症例のように発症後1年以上経過しても201Tl心筋スキャンにてlowuptakeを認めた例はまれである.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.22.8_986