症例 高度の情動ストレスにより誘発されたと考えられる冠動脈造影上正常所見を呈する急性心筋梗塞の1症例

症例は69歳の女性,入院当日の早朝暴漢に襲われ,殺すと脅された.その直後より前胸部絞扼感を呈し,5時間後,来院時の心電図ではV1~V3にQSpattemとSTの上昇を認めた.6時間後の冠動脈造影にて正常冠動脈であり,左室造影では,segment2-4にakinesisを呈した.入院時GOT24U/l,LDH412U/ml,CPK2071U/lであり,CPKisozymeはMB型が10%を占めた.またミオグロビンは定性法にて陽性であった.CPKは発症19時間後に2621U/lと最高値を呈した. 1カ月後の冠動脈造影においても狭窄を認めず,過呼吸負荷により冠攣縮を誘発しえなかった.さらに左室造影で...

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Published in心臓 Vol. 23; no. 7; pp. 768 - 772
Main Authors 前田, 達生, 種本, 基一郎, 福井, 俊彦, 高田, 輝雄, 藤林, 里佳子, 薄木, 成一郎, 大西, 一男, 辻本, 豪, 佐古田, 剛, 福原, 正博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1991
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.23.7_768

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Summary:症例は69歳の女性,入院当日の早朝暴漢に襲われ,殺すと脅された.その直後より前胸部絞扼感を呈し,5時間後,来院時の心電図ではV1~V3にQSpattemとSTの上昇を認めた.6時間後の冠動脈造影にて正常冠動脈であり,左室造影では,segment2-4にakinesisを呈した.入院時GOT24U/l,LDH412U/ml,CPK2071U/lであり,CPKisozymeはMB型が10%を占めた.またミオグロビンは定性法にて陽性であった.CPKは発症19時間後に2621U/lと最高値を呈した. 1カ月後の冠動脈造影においても狭窄を認めず,過呼吸負荷により冠攣縮を誘発しえなかった.さらに左室造影では壁運動は著明に改善し,入院時みられたakinesisは消失し,正常壁運動であった.また心電図上も前胸部誘導においてr波の出現および増高を認め,陰性T波は陽性となった. 本症例は強盗に襲われるという極めて強いストレスにより引き起こされた心筋梗塞であり,stunned myocardiumの状態であったと考えられ本症例の発症には冠スパスムが関与している可能性が示唆された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.23.7_768