症例 アスベストとの関連が示唆された心膜原発性悪性中皮腫の1例

症例は74歳男性.主訴は呼吸困難.平成2年3月2日に労作時の呼吸困難と下腿浮腫を認めたため当院を受診入院となった.身長160cm,体重69kg,血圧110/92mmHg,呼吸数40回/分.頸静脈に怒張を認めた.胸部X線写真上はCTR87%と著明な心拡大と軽度の肺うっ血を呈し,心エコーでは多量の心膜液を認めたため,心膜穿刺で血性液約1000mlを採取した.細胞診所見と組織化学的,免疫組織化学的染色(keratin陽性,EMA陽性,CA19-9陰性,CEA陰性),および電顕所見(細胞表面の豊富なlong slender microvilliと細胞質内のdesmosome)から悪性中皮腫と診断され,...

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Published in心臓 Vol. 26; no. 2; pp. 200 - 205
Main Authors 曽原, 寛, 合屋, 雅彦, 矢島, 隆司, 杉本, 圭市, 宮原, 康弘, 清水, 善次, 廣江, 道昭, 丸茂, 文昭, 高部, 和彦, 伊藤, 信夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1994
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Summary:症例は74歳男性.主訴は呼吸困難.平成2年3月2日に労作時の呼吸困難と下腿浮腫を認めたため当院を受診入院となった.身長160cm,体重69kg,血圧110/92mmHg,呼吸数40回/分.頸静脈に怒張を認めた.胸部X線写真上はCTR87%と著明な心拡大と軽度の肺うっ血を呈し,心エコーでは多量の心膜液を認めたため,心膜穿刺で血性液約1000mlを採取した.細胞診所見と組織化学的,免疫組織化学的染色(keratin陽性,EMA陽性,CA19-9陰性,CEA陰性),および電顕所見(細胞表面の豊富なlong slender microvilliと細胞質内のdesmosome)から悪性中皮腫と診断され,胸部造影CT,Ga-67シンチ,Tc-99m標識赤血球による心プールシンチとT1-201心筋シンチのdual isotope SPECT,TEE(食道エコー)から心膜原発性悪性中皮腫と診断された.アスベストと胸膜原発の悪性中皮腫との関連は有名であるが心膜原発との関連性についてはまだ十分に知られていない.本例では清酒醸造業従事歴があり,醸造濾過工程でアスベストが使用されていて,気管支洗浄液からアスベストを証明できたことからその関連性が強く示唆され,同業者の健康問題として看過できないと思われた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.26.2_200