症例 家族性原発性肺高血圧の1学童例

家族歴を有する原発性肺高血圧症の10歳男子例を経験した.心電図検診の意義とその後の経過観察のあり方について考えるうえで重要な症例であると思われたので報告する. 小学校1年時の心電図検診にて,V1のR波が1.5mVかつR/S>1より右室負荷を疑われ,要経過観察とされた.しかし,4年生時に全身倦怠感が出現し近医を受診したところ心雑音を指摘された.しかし精査のため当科受診するまで心電図は一度も記録されていなかった.この時の心電図では,右軸偏位,右室負荷,右房負荷,不完全右脚ブロックなどがみられ,心臓カテーテル検査において,主肺動脈収縮期圧137mmHg,肺/体血管抵抗比1.0で,肺高血圧症をき...

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Published in心臓 Vol. 26; no. 6; pp. 639 - 644
Main Authors 岡川, 浩人, 鈴木, 淳史, 西島, 節子, 奥野, 昌彦, 服部, 政憲, 中川, 雅生, 島田, 司巳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1994
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Summary:家族歴を有する原発性肺高血圧症の10歳男子例を経験した.心電図検診の意義とその後の経過観察のあり方について考えるうえで重要な症例であると思われたので報告する. 小学校1年時の心電図検診にて,V1のR波が1.5mVかつR/S>1より右室負荷を疑われ,要経過観察とされた.しかし,4年生時に全身倦怠感が出現し近医を受診したところ心雑音を指摘された.しかし精査のため当科受診するまで心電図は一度も記録されていなかった.この時の心電図では,右軸偏位,右室負荷,右房負荷,不完全右脚ブロックなどがみられ,心臓カテーテル検査において,主肺動脈収縮期圧137mmHg,肺/体血管抵抗比1.0で,肺高血圧症をきたす器質的心および肺疾患がないため原発性高血圧症と診断した.本例の母親が原発性肺高血圧症にて死亡しており,心電図検診の突然死予防の目的から考えると,原発性肺高血圧症の家族歴があり,かつ右室負荷が疑われる場合には,心臓専門医による十分な経過観察が必要と思われた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.26.6_639