症例 冠スパスムス性狭心症を伴った冠状動脈肺動脈瘻の1例

我々は狭心痛を主訴とした冠状動脈肺動脈瘻の1例を経験し,その心筋虚血が瘻発生部位にみられた冠スパスムスにより生じたので報告する.症例は50歳,男性,主訴は胸痛.昭和63年2月頃より階段歩行で胸痛を自覚するようになった.数週間後より夜間の胸痛で覚醒するようになり,また昼間の安静時や軽い労作においても胸痛が頻発するようになったため,昭和63年4月1日入院する.心電図ではV,誘導に2相性T波を認めた.Bruce法によるトレッドミル負荷心電図ではstage 2でST低下を認め,胸痛を訴えた.冠動脈造影では左冠状動脈前下行枝seg.7に50%狭窄を認め,同部位から肺動脈主幹部に向かう瘻血管がみられた.過...

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Published in心臓 Vol. 21; no. 8; pp. 951 - 955
Main Authors 井上, 知, 横井, 良明, 若木, 伸夫, 山口, 勝雄, 宇野, 悠爾, 山本, 晃司, 檀上, 健作, 竹本, 和司, 三嶋, 小百合
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1989
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.21.8_951

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Summary:我々は狭心痛を主訴とした冠状動脈肺動脈瘻の1例を経験し,その心筋虚血が瘻発生部位にみられた冠スパスムスにより生じたので報告する.症例は50歳,男性,主訴は胸痛.昭和63年2月頃より階段歩行で胸痛を自覚するようになった.数週間後より夜間の胸痛で覚醒するようになり,また昼間の安静時や軽い労作においても胸痛が頻発するようになったため,昭和63年4月1日入院する.心電図ではV,誘導に2相性T波を認めた.Bruce法によるトレッドミル負荷心電図ではstage 2でST低下を認め,胸痛を訴えた.冠動脈造影では左冠状動脈前下行枝seg.7に50%狭窄を認め,同部位から肺動脈主幹部に向かう瘻血管がみられた.過呼吸負荷により冠スパスムスが誘発され,瘻発生部位で完全閉塞となった.同部位から肺動脈に向かう瘻血管も消失した.ニフェジピン投与後に施行したBruce法による負荷心電図では,Bruce stage 3を終了するも胸痛なく,ST・Tの低下も認められなかった.本例においては左冠状動脈前下行枝の瘻発生部に一過性の完全閉塞を示したこと,Ca拮抗剤投与後には狭心発作がみられないことから冠スパスムスによる狭心症であった.従来より冠状動脈肺動脈瘻に狭心症や心筋梗塞の合併があるにもかかわらずその心筋虚血の成因が必ずしも明らかにされておらず,それらの中には冠スパスムスの関与する可能性を本症例は示唆している.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.21.8_951