症例 早期大量免疫グロブリン療法が奏功しなかった劇症型心筋症の1救命例

髄膜炎の既往(8歳時)を持つ15歳女性.1999年3月20日に全身倦怠感,胸部不快感,38℃ 台の発熱が出現し,翌日,ショック状態のため,近医に入院した.同月23日には心拍数40/分,心電図上完全房室ブロックを認めたため,当院に転送された.急激発症の心不全,完全房室ブロック,炎症反応,心筋逸脱酵素値の上昇,血小板数減少,フィブリン分解物値の上昇より,劇症型心筋炎兼播種性血管内凝固と診断した.体外式ペーシング,大動脈内バルーンパンピング,持続血液濾過透析,人工呼吸を施し,ヒト免疫グロブリン(100g/5日間),メチルプレドニゾロン(1500mg/3日間)を投与した.心機能は左室短縮率上10.9%...

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Published in心臓 Vol. 33; no. 3; pp. 239 - 244
Main Authors 渡辺, 康志, 田中, 喜美夫, 渡辺, 慎太郎, 田中, 一司, 武井, 泰彦, 江尻, 成昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2001
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Summary:髄膜炎の既往(8歳時)を持つ15歳女性.1999年3月20日に全身倦怠感,胸部不快感,38℃ 台の発熱が出現し,翌日,ショック状態のため,近医に入院した.同月23日には心拍数40/分,心電図上完全房室ブロックを認めたため,当院に転送された.急激発症の心不全,完全房室ブロック,炎症反応,心筋逸脱酵素値の上昇,血小板数減少,フィブリン分解物値の上昇より,劇症型心筋炎兼播種性血管内凝固と診断した.体外式ペーシング,大動脈内バルーンパンピング,持続血液濾過透析,人工呼吸を施し,ヒト免疫グロブリン(100g/5日間),メチルプレドニゾロン(1500mg/3日間)を投与した.心機能は左室短縮率上10.9%から12.2%までにしか改善せず,第10病院日よりプロプラノロールを0.2μg/kg/minから漸増投与した.第72病院日よりメトプロロールに変更,20mgまで漸増し,左室短縮率は12.2%から38.5%に改善し,第120病院日に退院.10月には,心エコー図上,前壁中隔壁運動は改善した. 心筋炎早期におけるヒト免疫グロブリン大量療法はimmunomodulatory効果を介して心機能を改善するが,サイトカインレベルが高くない症例での効果は制限されると考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.33.3_239