症例 ゲムシタビンにて腫瘍縮小効果とQOL改善が得られた心膜悪性中皮腫の1例

心膜悪性中皮腫は非常にまれな疾患である.生前診断が困難であり予後不良である.今回我々は,開胸下の生検にて確定診断に至り,ゲムシタビンを使用した化学療法で腫瘍縮小効果とQOLの改善を得た症例を経験したので報告する. 症例は58歳,男性.主訴は呼吸困難.2003年2月中旬より呼吸困難が出現し増悪したため,近医を受診した.エコー上心タンポナーデが疑われ,当科に紹介入院した.緊急心嚢ドレナージにて1400mlの血性心嚢液を排液し,症状は改善した.原因精査を進めたが,画像検査,心嚢液細胞診,腫瘍マーカー,心膜生検において有用な所見が得られず診断に苦慮した.外来にて経過観察中3カ月後再び症状が増悪し,エコ...

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Published in心臓 Vol. 36; no. 9; pp. 647 - 652
Main Authors 小倉, 理代, 日浅, 芳一, 細川, 忍, 篠原, 勉, 近藤, 治男, 藤井, 義幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2004
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Summary:心膜悪性中皮腫は非常にまれな疾患である.生前診断が困難であり予後不良である.今回我々は,開胸下の生検にて確定診断に至り,ゲムシタビンを使用した化学療法で腫瘍縮小効果とQOLの改善を得た症例を経験したので報告する. 症例は58歳,男性.主訴は呼吸困難.2003年2月中旬より呼吸困難が出現し増悪したため,近医を受診した.エコー上心タンポナーデが疑われ,当科に紹介入院した.緊急心嚢ドレナージにて1400mlの血性心嚢液を排液し,症状は改善した.原因精査を進めたが,画像検査,心嚢液細胞診,腫瘍マーカー,心膜生検において有用な所見が得られず診断に苦慮した.外来にて経過観察中3カ月後再び症状が増悪し,エコー,CT上心嚢内に腫瘍を認めた.確定診断のため開胸下に生検を施行し,免疫組織染色にて心膜悪性中皮腫と診断された.腫瘍は右房外側の腫瘍塊の他左室,右室前面にび漫性に拡がり摘出は不可能であった.ゲムシタビン1000mg/m2の単剤投与を開始し,2クール終了時点でCT上著明な腫瘍の縮小を認めた.自覚症状は改善し退院が可能であった. 本疾患は手術不能例に対する有効な治療法が報告されておらず,標準的治療法も確立されていない.近年び漫性悪性胸膜中皮腫にゲムシタビンが有効であったという報告が散見されるが,心膜原発の悪性中皮腫においても本薬剤の有効性が示唆された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.36.9_647