研究会 第35回理論心電図研究会 テーマ : イオンチャンネルから見たQT延長, ST異常, T・U波の異常 QT延長症候群における異常T波および期外収縮の成因

QT延長症候群における異常T波と期外収縮の成因を明らかにするために,動脈灌流左室心筋切片において遅延整流カリウム電流急速活性化成分(IKr)と緩徐活性化成分(IKs)を遮断して,心筋各層:心外膜細胞(Epi),心内膜細胞(Endo),その中層に存在するM細胞の活動電位(AP)と貫壁性双極心電図(ECG)を検討した.薬剤の投与前には陽性T波が認められ,活動電位持続時間(APD)はM>Endo>Epiの順であった.T波終末は三層のうち再分極の終了が最も遅れたMの再分極点に一致し,T波の頂点は最も早く再分極が終了したEpiの再分極点に一致した.陽性T波はM-Epi間の電気勾配によって形成...

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Published in心臓 Vol. 33; no. 4; pp. 330 - 339
Main Authors 江森, 哲郎, 大江, 透
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2001
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Summary:QT延長症候群における異常T波と期外収縮の成因を明らかにするために,動脈灌流左室心筋切片において遅延整流カリウム電流急速活性化成分(IKr)と緩徐活性化成分(IKs)を遮断して,心筋各層:心外膜細胞(Epi),心内膜細胞(Endo),その中層に存在するM細胞の活動電位(AP)と貫壁性双極心電図(ECG)を検討した.薬剤の投与前には陽性T波が認められ,活動電位持続時間(APD)はM>Endo>Epiの順であった.T波終末は三層のうち再分極の終了が最も遅れたMの再分極点に一致し,T波の頂点は最も早く再分極が終了したEpiの再分極点に一致した.陽性T波はM-Epi間の電気勾配によって形成され,また,貫壁性再分極間のばらつき(transmural dispersion of repolarization:TDR)もM-Epi間にて生じた.IKrとIKsの遮断により二相性,陰性,三相性の異常T波が出現した.APDの延長は,MとEpiにおいて著しく,Endoにて最も早く再分極が終了するようになった.そのため,TDRはM-EndoまたはEpi-Endoにて生じ,増大した.APDがM>Epi>Endoの順に延長した場合に,T波は二相性となり,一方,APDがEpi>M>Endoの順に延長した場合には,T波は陰性または三相性となった.前者では,三層のうちMにて再分極の終了が最も遅れ,T波終末はMの再分極点に一致した.後者では,Epiにおいて再分極の終了が最も遅れ,T波終末はEpiの再分極点に一致した.二相性,陰性T波ともに陰性部分の底点は,三層のうちで最も早く再分極が終了したEndoの再分極点に一致した.第二相早期後脱分極がAPD延長の著しいM,Epiにて認められた.さらに,早期後脱分極によって誘発された撃発活動が期外収縮を引き起こし,Torsades de Pointesが発生した.また,急激な刺激周期の短縮により早期後脱分極が促進され,T波交代現象が認められた. IKrとIKsの遮断により,QT延長症候群に類似した異常T波が出現した.異常T波は,心筋各層におけるAPDの延長のばらつきや早期後脱分極によって生じる電気勾配を反映していた.また,心筋シンシチウムにおいて初めて早期後脱分極が認められ,早期後脱分極によって誘発された撃発活動がTorsadesde Pointesの引き金となる期外収縮を引き起こすことが確認された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.33.4_330