症例 左室に原発した悪性線維性組織球腫の1例

症例は58歳,女性.高血圧と心拡大を指摘され来院した.心エコー図検査では,心室中隔に茎を有して左室腔に突出し,心拍動に合わせ振り子運動をする, 直径約3.0cm大の塊状エコー像を認めた.MRI所見では,腫瘤はT1強調画像で心筋に比し等信号ないしわずかに高信号強度,T2強調画像で心筋よりわずかに高信号強度を呈し,内部構造は比較的不均一であった.そして,その腫瘤はGd造影で著明に増強されたが,周囲心筋はGd造影増強効果を認めなかった.冠動脈造影検査では,左前下行枝中隔枝より2本の栄養血管と1個の腫瘍濃染像を認めた.CT検査やGaスキャンなどで全身を検索したが,心臓以外には病巣が見出せず,左室原発性...

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Published in心臓 Vol. 30; no. 4; pp. 240 - 244
Main Authors 嵯峨, 孝, 平井, 淳一, 青山, 隆彦, 千間, 純二, 原城, 達夫, 藤野, 晋, 山村, 修, 羽場, 利博, 山崎, 義亀與, 山本, 信一郎, 高橋, 政夫, 田端, 茂喜, 小西, 二三男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1998
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Summary:症例は58歳,女性.高血圧と心拡大を指摘され来院した.心エコー図検査では,心室中隔に茎を有して左室腔に突出し,心拍動に合わせ振り子運動をする, 直径約3.0cm大の塊状エコー像を認めた.MRI所見では,腫瘤はT1強調画像で心筋に比し等信号ないしわずかに高信号強度,T2強調画像で心筋よりわずかに高信号強度を呈し,内部構造は比較的不均一であった.そして,その腫瘤はGd造影で著明に増強されたが,周囲心筋はGd造影増強効果を認めなかった.冠動脈造影検査では,左前下行枝中隔枝より2本の栄養血管と1個の腫瘍濃染像を認めた.CT検査やGaスキャンなどで全身を検索したが,心臓以外には病巣が見出せず,左室原発性腫瘍と診断した.そして,CT,MRIおよぶ冠動脈造影検査より,本例の腫瘤は単発で,下部心室中隔より短い茎を持って左室腔に突出し,さらに周囲心筋への浸潤はないと推測し,経大動脈アプローチ,内視鏡下で茎付着部より腫瘤を切除した.組織学的所見は悪性線維性組織球腫( 以下, M F H と略す) , stor-iform-pleomorphic typeであった. 心臓MFHの報告例は少ない.しかも,左室に原発した例は著者が調べえた範囲で初めての報告と思われる. 心臓MFHの予後は不良であるが,本例は無症状期に腫瘍の存在を確認し,完全に切除することができた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.30.4_240