HEART's Original [臨床研究] 日本人の硬化性大動脈弁狭窄症の臨床的背景と予後

背景:本邦では高齢者の急増に伴い,硬化性大動脈弁狭窄症(AS)の患者が増加している. 対象・目的:当院にて新規に硬化性ASと診断された399例(男147例,女252例)を対象に臨床的背景と予後を検討. 方法:全症例を連続波ドプラ法により測定された大動脈弁圧較差が64mmHg以上の重症群と,それ未満の軽症群に分け,臨床的背景,予後を調査し,Logistic EuroScore(LES)を用いて手術リスクを評価した.うち,3年以上の経過観察が可能であった症例で各種薬剤と心事故発生との関係を検討した. 成績:硬化性ASの診断症例数は毎年増加していた.重症群は92例(男31例,女61例,平均年齢;男7...

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Published in心臓 Vol. 40; no. 5; pp. 458 - 466
Main Authors 村上, 弘則, 林, 健太郎, 渡辺, 大基, 武藤, 晴達, 佐々木, 晴樹, 淺野, 嘉一, 宮本, 憲次郎, 大本, 泰裕, 山口, 康一, 廣上, 貢, 田中, 繁道
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2008
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Summary:背景:本邦では高齢者の急増に伴い,硬化性大動脈弁狭窄症(AS)の患者が増加している. 対象・目的:当院にて新規に硬化性ASと診断された399例(男147例,女252例)を対象に臨床的背景と予後を検討. 方法:全症例を連続波ドプラ法により測定された大動脈弁圧較差が64mmHg以上の重症群と,それ未満の軽症群に分け,臨床的背景,予後を調査し,Logistic EuroScore(LES)を用いて手術リスクを評価した.うち,3年以上の経過観察が可能であった症例で各種薬剤と心事故発生との関係を検討した. 成績:硬化性ASの診断症例数は毎年増加していた.重症群は92例(男31例,女61例,平均年齢;男76.4歳,女81.7歳),軽症群は307例(男116例,女191例,平均年齢;男78.7歳,女80.6歳)で,重症群と軽症群の無症候患者率(20.7% vs 30.9%,ns),喫煙率(23.5% vs 36.0%),僧帽弁輪石灰化合併率(47.8% vs 43.3%)は両群間で有意差がなかった.LESは重症例で男性7.98±12.60%,女性12.90±16.80%,軽症例で男性9.59±12.86%,女性11.65±15.58%であり,両群間の性別ごとの差はなかった.LESが5%未満の症例は重症例の34.8%,軽症例の29.2%に過ぎなかった.大動脈弁置換術(AVR)施行例のLESは未施行例に比し有意に低値であった(重症群p<0.01,軽症群p<0.001) . 心事故( 心不全, AVR , 失神, 心臓死) は重症群の46.7 % , 軽症例の16.3% ( p<0.001 ) に出現したが,心臓死は両群で差はなかった.3年以上の経過観察は65例で可能であり(男23例,女42例,平均年齢79.8歳),心事故は16例(24.6%)に発生した.3年以上の長期経過観察例ではアンジオテンシン変換酵素阻害薬のみが5年程度有意に心事故発生を抑制した(p<0.01). 結論: 本邦の硬化性A S は初めて診断された時点で非常に高齢, かつ, 合併症が多くAVR 施行まで至らない症例が多い.重症例では手術可能であればAVR施行が勧められるが,非適応例,手術を拒否した症例に対する薬物療法としてアンジオテンシン変換酵素阻害薬のみが心事故を回避する可能性が示唆された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.40.5_458